あかんたれブルース

継続はチカラかな

GHQが恐れた文豪J.

以前、泉鏡花の『婦系図』に家族主義vs個人主義が埋め込まれている意外を話しました。ここでいう家族主義は前時代的封建的なニュアンスであり、前者は欧米的自由主義のバイアスがある。敗戦戦後この個人主義はますます優勢を極めてリベラルの台頭要因のひとつにもなった。

谷崎潤一郎を耽美派作家からデカダン作家と括るものもあります。確かに谷崎は美を追求した個人主義者のようではありますが、『細雪』『台所太平記』からすれば家族主義以外の何ものでもない。のではなかろうか。と

あの優しい眼差しは太宰治にはない。

それは血縁より広い(擬似)家族主義ともいうべき包容力でした。何でだろうなと考えるに、実家の家業が傾いてからも恩師や友人に助けられてきた体験からのものではないだろうか。前妻への仕打ち等はこの際、正直とか未熟としてですけどね。誰も谷崎に完璧など求めていないでしょう。

個人主義vs家族主義には自由主義というまったく別次元の要素が絡んで歪曲されている。といか、双方がもともと対立論争にはならない。その問題点は家族主義に対するネガティブな括りつけにあったとも思います。

谷崎潤一郎はもっともノーベル文学賞に近かった作家であり、それを逃した文豪といわれる。その理由に作品に政治的主張がなかったからともいわれてる。

そうかなあ。。戦時中『細雪』は政府軍部から弾圧を喰らって執筆困難となりました。戦後はGHQからも圧力があったという。このGHQという点が曲者だ。

米国が日本をもっとも恐れたのは技術力、知能、勤勉さ以上に「家族主義」という結束力ではなかったか。それは東アジアの血族ではない。家族から地縁、組織、国家にまでひろがる日本人としての連帯意識じゃなかったか。

犬のように嗅覚の鋭いGHQは『細雪』にさえも危険を感じたのではないかと。

『細雪』は滅びゆく日本の関西の文化をある没落上流家庭の物語として綴ったものです。そこに日本的家族主義を察して警戒したとすれば、当時共産主義に被れていたGHQもなかなか観る目?鼻かな? が、あったことになりますね。

さてそれから80年。

個人主義は全世界に蔓延し尽くして現在の混迷を招いている。新自由主義とか様々に名を変えて

人権とか、差別とか、自由とか、

雇い主にあたる蒔岡家(千倉家・谷崎家)は奉公人に対するケジメ(区別)はあっても差別があったか?

それぞれが上手く折り合いをつけて共生していたではないか。

と、思いました。

優しい谷崎潤一郎の世界

『台所大平記』(谷崎潤一郎作・池淵厚子朗読)最後まで視聴しました。とってもよかったです。

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【朗読】谷崎潤一郎『台所太平記』【文豪の家で働く女中さん列伝!】https://youtu.be/0kfuZT6GYpg?si=xD1dAFEAZeR-FYLw @YouTubeより 池淵さんの讃子(松子)最高!

『細雪』読んだ方、まだ未読の方にも是非お勧めです。楽しいし最後は感動しますよ。

簡単に登場する女中さんを紹介

【ハツ】泊出・谷崎家に二十年近く務めた実質女中頭。和歌山に嫁ぐ。詳細は前回参照

【ウメ】泊出・真面目だがテンカンの発作を発症し度々騒動を起こす。ハツの弟に嫁いでいく。

【コマ】女中列伝随一の奇行強烈な人物。驚いたり興奮すると「ゲッツ」と奇声(嘔吐含み)発する癖がある。女学校(師範科)出でゴリラの真似とフラダンスが得意。自称花王石鹸で容姿の不味さは自覚していて、結婚できるか悩むが後年良縁に恵まれる。ハツの後継者として谷崎家の信頼を得ていた。

【テイ】薄幸の苦労人だが性質No.1で慈愛の深い女性。良縁に恵まれ谷崎家から最初に嫁入りした女中さん。逗子で寿司屋の女将さんとなり女中OGの出世頭。

【サヨ】偏執的な性質を谷崎から嫌われて遂には解雇される。松子が紹介した次の雇い主家で大事件を起こす。

【セツ】泊出・故郷に一児ありのシングルマザー。サヨ退職後しばらくして彼女を追って上京しレズビアン騒動を起こしてしまう。

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【スズ】谷崎家美人女中の東横綱。女優津島恵子(↑)似。ただし教養なく谷崎に文字を習う。その成果もあり瞳に知性の輝きを得て益々美しくなった。同僚ギンの窮地を助けたりした陰徳もあって良縁に恵まれ谷崎家から嫁いでいく。

【ギン】泊出・谷崎家美人女中西横綱。薩摩おごじょらしいハッキリした性格。買い物中自転車で橋から川に転落して額を切って大流血事件を起こしたことから眉間に傷が残る。が、二十歳を過ぎるとその美貌に周囲が響めく。熱海時代にダメンズ光雄に入れ上げハラハラさせられるが見事ゴールイン。スズと共に谷崎家から嫁ぎ、晩年の谷崎ともっとも身近な家庭を築いた。

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ギンのイメージ 柴咲コウ⁈

【ユリ】列伝中最大のトラブルメーカー。しかしその個性を谷崎は大いに好んだ。が、周囲との軋轢でどうにも庇いきれなくなり本人の希望もあって(高峰秀子らしき)女優の付き人となる。が、そこでもしくじり大阪に戻った残念な人。性格最悪🌀

 

見繕って数人(名前横の泊出は鹿児島泊出身)を簡単に紹介です。

この愉快でハラハラアッとホームドラマには松子(谷崎家)と潤一郎の優しい眼差しがある。女中というと封建的差別の臭があるでしょうが、それをまったく感じさせない。花登筺の浪花奉公人ど根性哀歌なんて微塵もなし。それを小説フィクションだからという人もあるでしょうが、いやいや彼女たちのその時々のその後の縁(えにし)からそれは的外れ。

奉公後にパーマネントのショックでテンカンの発作を発症したウメは月に一二回大変な騒動で女中達は恐怖に震え上がり、コマなどは例の「ゲッ!」を連発し庭で吐いている始末。発作後は必ず失禁して翌日は寝たきりになったウメを谷崎家は解雇していない。どころか、阪大病院に度々診てもらっている。そして長く勤めた後、ウメはハツの弟に嫁いでいくのです。二人は義姉妹となり谷崎の喜寿のパーティーにそれぞれの子供を連れて出席していました。

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傑作だったのはコマとウメが映画『哀愁』を観に行ってあまりの悲しさに感極まったコマが号泣と「ゲッ!」発作が始まり慌ててトイレに逃げ込んだのですが、残されたウメも感染して哀しくなって劇場でオイオイ泣いてしまい観客から大顰蹙だったエピソードは笑っちゃいけないけど爆笑しました。

翌日、ウメは2階のベランダで大イビキかいて昏睡状態で発見! 無論失禁して。大変だなあ😅

ま、阪大の医師が言ったように結婚したら完治したようです。よかった

あと、美人女中スズとギンは下手な放送作家なら歪み合わせるとこですが、小説より奇なりで、ギンの彼氏がヤクザ(100%稲川会)に博打の借金で指詰めを迫られ絶対絶命のピンチにギンはスズを頼り、スズもそれを快く引き受け5万円用立て「だけど絶対に光雄をヤクザから足を洗わせなさい」と釘を刺す。

だいたいこんなダメンズはどこまでもダメが相場なんですがギンはスズとの約束を守り夫を立て直し立派な一家を立てて最後まで谷崎家と交際を続けた。

後半のコマの縁談から最終章の懐かしい女中(娘)たちとの再会では涙が出て困りました。谷崎潤一郎で泣くう?

『細雪』は没落したとはいえ上流階級の「家族」の物語です。次女幸子(松子)の夫として登場する貞之助は谷崎の分身であり血縁があるわけではなく途中から参加した部外者だ。その上で貞之助の妻に対するその姉妹に対する心遣いは実に優しい。

また、そのなかでさりげなく夜中に堕胎した子を思い出して忍び泣く妻(松子)を描写していた。一説には中絶ではなく松子夫人の高齢出産を危ぶむ医師からの勧めで、松子夫人を谷崎が庇う意図からだったともあります。

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谷崎の家族にはお春どん(ハツ)や『台所太平記』を彩る様々な女中さんがいた。この一連の作品をファミリードラマとしましたが。そこには血縁ではない擬似家族という日本特有の「家族主義」があると思う。封建的とか東アジア的とか血縁ではない、日本特有の文化だ。

谷崎潤一郎を耽美主義の変態スケベ極道作家と揶揄する人もいる。私もその1人でした。でも今度という今度は谷崎に泣かされて思いしらされたみたいです。

それはこの作品最大のジョーカーたるユリに対しても、そのユリの顛末でさえも気を配っている。あの『細雪』のトラブルメーカー妙子にも最後の最後、赦しの福音を(読者に対しても)もたらしたように。。なんか壺井栄の『二十四の瞳』ようだったなあ。そう谷崎にとって彼女たちは教え子生徒であって娘みたいな存在だったんですよね。

『細雪』は『台所太平記』とセットで堪能することをオススメします。

細雪ロスの特効薬

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『細雪』ロスから池淵厚子さん朗読動画で谷崎潤一郎『台所太平記』を視聴しました。

まだ途中ですが、圧巻痛快です。この細雪ロスインディオスコモエスタ細雪にピッタリのスピンオフ現場リーク作品だったから。

で、まず、第一話から登場する「ハツ」さん。この方は谷崎(松子)家で一番長く勤めていた女中さんで『細雪』でいうところの「お春どん」にあたりますかね。幸子(松子)蒔岡家でもっとも信頼された女中さんでした。

このハツさんの紹介から始まるのですが、出身が九州は鹿児島。えっ? の南端の、えっ? 枕崎市 えっえっ⁈  から徒歩で2里半の「泊」ですとお⁉️ びっくりでした。陳の地元の隣町でんがな!枕崎駅はJR指宿枕崎線の本州最南端の駅で、そこから西に「泊」(とまり)→坊津(ぼうのつ)→久志(くし)という小さな港町が続きます。焼酎の「さつま白波」のCMで用いられる風景がそれ。因みに久志からは教育者(成城学園、玉川学園、千葉工業大学創設者)小原國芳を輩出している。

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しかもハツさんの口利きで谷崎家の女中の8割以上はこの泊出身者だったという。女中部屋が鹿児島県人会になっていたほどに! びっくりです。

『細雪』が京阪神の文化を、なかでも大阪船場から神戸芦屋の情緒に綴られていたなかで、女中さんはほぼ坊泊出身者で怪しげな薩摩弁(坊語)を操っていたとは!その影響を少なからず谷崎家も受けていたなんて!(娘の悦子ちゃんはほぼ理解していたそうです)

鹿児島県は薩摩飛脚(スパイ対策)で独特な薩摩弁が共通語です。ただし、遠洋鰹業の拠点だった枕崎は例外で、九州、四国、伊勢、焼津、勝浦などの港町の言葉が混ざって鹿児島県の中では異質な言語孤島。その周辺の泊(坊、久志)、桜山(金山)、板敷(頴娃)は基本薩摩弁ですが、若干は枕崎の影響を受けている。

作品中にハツさんの帰省の行程が紹介されていましたが、神戸から山陽本線の終点下関まで行って(関門トンネルが開通前で)船便待ちして船で門司に渡り、そこから鹿児島本線で伊集院まで行き(旧)南薩線で枕崎まで。そこから泊まで10キロを徒歩で荷物を背負って帰る西日本九州の縦断の苦行巡礼の行程が記されいました。気が遠くなります。(私は高校時代の夏休みに実際に歩いたことがある。無論道路は舗装されている)

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このハツさんは相当な不細工さんだったようです。『風と共に去りぬ』のメイド・マミーのイメージ。ですがスタイルは「マリリンモンローばり」のナイスバディで性格も気働きもよく谷崎家での信頼は格別だったそうです。

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それは谷崎も同様でハツさんの料理の腕、味覚センスもあって谷崎が単身熱海などに滞在するときは必ずハツさんを伴っていました。

もうひとつ谷崎がハツさんに好感をもっていたのは彼女の清潔さ。特に足の裏がいつも綺麗(よく拭いてたから)だったと。耽美主義作家は観ているところが違う。

十数年を谷崎家で女中頭を勤めたハツさんとの最後の日に谷崎が彼女に散髪を頼む場面は実に良かったなあ。彼女は姉のいる和歌山に後妻として嫁いで行った。

まだ、半分ぐらいですが、

私はこの『台所太平記』で、谷崎家が松子夫人が、そして谷崎潤一郎が大好きになってしまった。『細雪』の蒔岡家の温かさ優しさは決して美化されたフィクションではないと確信した。

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【朗読】谷崎潤一郎『台所太平記』【文豪の家で働く女中さん列伝!】https://youtu.be/0kfuZT6GYpg?si=xD1dAFEAZeR-FYLw @YouTubeより

 

 

現在は泊、坊津、久志の3つの町は枕崎市を離れて南さつま市になっています。

女性礼賛プレーとな?

まだ『細雪』の酔韻が治りません。二日酔いならぬ細雪酔いかな。再度谷崎関連をwiki等で掘り込もうかなと思ったところに

【文豪の生涯】谷崎潤一郎|美とエロスの間に生きたノーベル文学賞候補作家の魅力を徹底解説!

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https://youtu.be/k3eGVEKNyPY?si=6uxcStZ7DCx20Yka @YouTubeより

このYouTube うえのあい さんの「大人の国語便覧」の谷崎解説が素晴らしい! 納得の1時間35分でした。下手な映画より面白い。

あれらこれらを前提とし、語ります。

①谷崎の女性崇拝は美しかった母親から発していたんだなあ、は、さらに確信となりました。その上で、最初の妻に対するサディステックからナオミを経て松子夫人に対する下僕的マゾヒスティックな変容ももともと谷崎が求めてやまない理想のカタチ(女性崇拝)だったんですね。それに松子夫人が付き合ったと。夫婦善哉だ。

②『細雪』のヒロイン幸子(松子)の夫貞之助は谷崎視点(分身)で描かれている。物分かりの良い良人として。そのために実際の前夫をケイボンとして時間軸を調整して軽率軽薄なアホボンと描いてはいますが、どこか憎めない優しさがある。彼の失敗のおかげで理想の女性と結ばれた恩義(&負い目)もあったでしょうが、たぶん執筆時には既にケイボンの根津商店は倒産して北海道あたりに都落ちしてましたかね。それとも日劇でヌードダンサーの世話係してたかな? ま、ケイボン(根津清太郎)は間抜けでも人柄は良かったようです。

というか、谷崎自身も父親が商売で失敗し辛酸をなめている。くせに周囲の援助から大学まで進学できて、就職後は京都でお茶屋遊びに興じて放蕩三昧。と、みんな知ってる女性遍歴趣味趣向だ。小説の貞之助とは毛色が違うし、どこかでケイボンを重ねていましたかね? なんか憐憫かな

映画化2本目の『細雪』で川崎敬三が演じたケイボンは良かったです。上原健がやったら絶対ウケたと思う。演らしてみたかった。

なんにせよ、『細雪』の貞之助はデキすぎなんだけど密かに女性崇拝、幸子(松子)崇拝、この美しい姉妹を守るという「順吉」スピリットの現れだったのかもね。ま、作者の特権かな

③原作では四女妙子が難産の末に女児を死産します。それも実話からなのか、それとも松子に中絶させた罪悪感からなのかわかりませんが、とても美しくて悲しく描写されていました。読者としてはこれまで散々妙子に翻弄されていた鬱憤をすべて洗い流してしまうほどに、赦してしまう。

谷崎潤一郎って凄いなあと思った。因みに松子夫人に中絶させた子は男児だったそうです。

③YouTubeで市川崑版の『細雪』の石坂浩二演じる貞之助のラストシーンがアップされていました。

4K修復「細雪/The Makioka sisters」貞之助のラストシーン

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https://youtu.be/IBzgLJ9d7Z0?si=4EBgy3XmelrkL0U4 @YouTubeより

ま、市川と脚本家が相談して入れた場面と設定でしょうが、勘ぐれば谷崎が最初の妻の妹ナオミに入れ上げていたことから、妻幸子の美形の妹雪子にもなんらかしらの恋慕のニュアンスを入れ込もう。それは花嫁の父でも実妹のようでもいいから。。だとしたら、こんなゲスい冒涜はないと思った。原作レイプといったら過剰だろうか。だからオメエは有馬稲子と泥沼なんだよ! 新藤兼人を見習え! ボケ! と思いました。

④まあね、所詮は男と女。ましてや素人じゃないクリエイター稼業です。ましてや谷崎潤一郎に高潔な良識人を求めてやしない。わけですから

私は特に谷崎潤一郎を、特別好きでなかったけれど、今回の池淵厚子さんの朗読と、うえのあいさんの解説ですっかりその世界に魅了されました。まあ、『卍』だとか『鍵』とか『痴人の愛』とかもう一回とはさほど思わないけど、池淵さんの語ってくれる谷崎だったら  まあ、聴きたいかな。次回は『台所太平記』だそうです。そのうち『陰翳礼賛』もやるそうな。

楽しみだ。

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ぐぐぐっ、池淵厚子。。素人じゃない

小説『細雪』より奇譚後日談

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ほぼほぼ10日をかけて『細雪』朗読(池淵厚子版)を完走しました。実に楽しかった。感謝です🙏

以前あべよしみ版で視聴はしていましたが、今回は朗読というより『細雪・完全版』一人アフレコみたいな感じで、船場言葉もさることながら四姉妹+多数の登場人物を使い分ける池淵さんの技量には脱帽感嘆です。YouTubeライブでご尊顔を拝見しましたが素敵な女性です。キレッキレのマリンバ島崎友紀さんみたいな感じかな。私にはね

なかでも後半最後ぐらいに登場する雪子の縁談に奔走する美容師の娘さんは脇役ながら上手かったなあ。ジブリみたいな快活さよ。

この作品は戦前の斜陽にある上流家庭(四姉妹)のホームドラマですが、四女妙子というトラブルメーカーによって幾つかの修羅場がある。

その最後の最後で微弱陣痛からの死産場面は壮絶でした。これまで次女幸子同様に四女妙子には頭悩まされていたはずなのにほろりとさせられた。でも映画舞台では絶対にカットされるんだよな。

で、最後は嫁ぐ雪子の下痢で締めくられる長編大河ホームドラマ謎の終演。ために余韻も吹き飛んでこの姉妹たちのその後を追ってみた。

四女妙子(実名・信子)は幸子(松子)の夫(小説ではケイボン)と駆け落ちしたことは前に書きましたが、その後はプロゴルファーと結婚したようです。

次女幸子(松子)は谷崎と不倫中に妙子(信子)が駆け落ち騒動を起こしくれたおかげで離婚成立し、正式に谷崎と結婚。一男一女の娘恵美子(小説では悦子ちゃん)は谷崎の養女として育ち、觀世栄夫と結婚している。

觀世栄夫? どこかで聞いたような。。(シテ方)觀世流能楽師とありますが、私の記憶ではネスカフェゴールドブレンドCMの「違いのわかる」「上質な」人だ。

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調べたら俳優業も兼任しててNHK大河ドラマにも多数出演してる。もっとも驚いたのは『007 ゴールドフィンガー』のまさにその男ゲルト・フレーべのアフレコもやっていたってことです。オペラの出演演出まで手掛けた多彩な方だ。

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Goldfinger Theme Song - James Bond https://youtu.be/6D1nK7q2i8I?si=sQ8850Hm8dpGcvbr @YouTubeより

さて、ラストで華族(徳川家末裔)嫁いだ雪子(重子)はその後に姉幸子(松子)のもう1人の子清治を養子にしている! その子が随筆家渡辺たをりとのこと。まさに小説よりも数奇な華麗なる一族いやゴールドファミリーでした。

ケイボン(根津清太郎)の実家は大阪の大店で本町の靭公園の土地も根津商店の所有地なほどの金満家だった。それをケイボンが食いつぶして最後は日劇で下働きまで堕ちたそうです。ただ『細雪』に描かれていたようにアホボンだけど気の良い人柄だったようです。

彼と松子の子を谷崎と雪子(重子)夫妻がそれぞれ引き取り育てているって。。感無量

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尚、谷崎潤一郎の著作権は松子(右)から娘の恵美子(左)に受け継がれた。

明子は宙太を選ばない

『雪之丞変化』(1935-36年三部作ダイジェスト 松竹と1963年大映)を観てモヤっています。いずれも長谷川一夫版。

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その他にも東千代之介、美空ひばり、大川橋蔵。テレビ版では70年に(丸山)美輪明宏が演じたのもあったかな。私が原体験でのファーストコンタクトはこれで、ちょっとしたトラウマでした。

お話しは歌舞伎役者の雪之丞が親の仇を討つ復讐劇です。なもんで歌舞伎役者出の長谷川一夫にはハマり役となったんでしょう。

で、歌舞伎役者はピンからキリの旅役者までモテモテだってえのは世の伝統常識です。白塗りの様式美、とは別に役者はイケメンと相場が決まっていて流す浮き名がまた人気の証でもあり、「よっ!成駒屋!」の屋号の他に「人でなし!」なんていうのもあるくらい? まあ、人気ホストみたいなものですね。

でも実際に歌舞伎役者は男前が多くて(桂太郎の愛妾)お鯉が入れ上げた七代目市村羽左衛門は絶世の美男子とされている。実はハーフですけどね。明治期は多かったそうですよ。

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ま、とにかく役者はモテるのだ。ですがね、舞台で黄色い声援を浴びて幕が降りて化粧落として風呂入ってお茶屋に向かうときは「素」ですよね。女形→男

それでもイケメンでそのギャップがたまらない。のはわかる。でも、雪之丞はずーっと女装女形のままで恋こがられ逢瀬を重ねたりする。男子でノンケの僕にはそこがわからない。

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女学校のユリからの〜? 宝塚の男役が好き? でも女だよ。つーことは男でも女でも関係ないんだ。女性にとっては美しさが正義で正解。じゃあオレ駄目じゃん(T ^ T)

で、さ、僻みじゃないけど長谷川一夫の雪之丞はキッショい! 始終女形姿なのとセットで女形言葉発声なんだ。舞台と現実の倒錯か。ま、つまり雪之丞は(ファッション)オカマでやんして、ジェンダーかな。バイとはいえないが。「変化」はありません。

女性陣には割とオカマバーが人気がありますが、恋愛の対象になるかあ? 昔『おこげ』(1992年)という映画ありましたっけ。でもあれは超レアパターンだったと思う。

まあ、そんなこんなで女性というものがわからなくなりました。だって『52ヘルツのクジラたち』はそれが故に別れるんでしょう。

この市川崑版のリメイク『雪之丞変化』は長谷川一夫300本記念として捻り出したものです。とはいえオリジナルから28年経って長谷川一夫も五十過ぎている。様式美と化粧で乗り切れないものがあるような気もしますがねえ。

そして時代は長谷川一夫の正統派二枚目からシュッとした市川雷蔵に変わって、現在もイケメンはシュッとです。それは時代に関係なしで昔から女性は色白でシュッとした中性的な優男が好み。星明子は伴宙太より花形満を選ぶのさ。

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それもあって『紅の』ポルコは豚にされたのかもしれない。男子の本懐

屠られる民びと抗う民びと

『細雪』は1943年(昭和16年)から執筆連載がなされ、途中戦時下からの軍部の圧力もあったが執筆を続け、1944年(昭和19年)に私家上巻を知人に贈った。下巻が完成したのは戦後の昭和23年。しかし今度はGHQの検閲を受け、『細雪』全巻を中央公論社から刊行したの1949年(昭和24年)の12月だった。

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『細雪』の舞台(時代)設定は1936年(昭和11年)から1941年(昭和16年)の神戸芦屋、大阪(上本町)、東京などが描かれている。その描写は文学的価値以上に歴史文化的なものがあります。私が憧憬し懐かしむ大阪がそこにありました。

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日本は支那事変から真珠湾攻撃前の頃、欧州では第二次世界大戦(1939年)が勃発していた。といってこの芦屋の家族いや一般社会でも平穏そのもので数年後に国家を襲う大厄災を誰も予感するものはいない。

そんなものなんだろうなあ。。と思った。多分それに気づくのはサイパン陥落から制空権を握られ「空襲」という実害を体感してからでしょうか。

大阪大空襲(第一回目)は1945年(昭和20年)の3月です。

その頃、私の父は徴用で大阪の松下電気に勤めていました。第一回大阪大空襲(昭和20年3月13日)のあとに焼け跡の北区扇町あたりを呆然として歩いていたそうです。そのとき、背後でパーンという破裂音がして振り返ると焼け跡で遊んでいた子供たちの一人が焼夷弾かの不発弾を弄ってそれが破裂し、その破片の一部がその子の腹部を直撃したようでした。

近くにいた母親らしき女性が駆け寄って抱き抱えるのですが、その子の真っ赤に染まった腹部から腸が溢れ出てきて、母親はそれを必死に子供のお腹のなかに押し戻そうとしていたと。

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それから四半世紀経って、父はよくうなされることがあった。そんなときは直ぐに起こしてくれるようにと母に言いつけいました。その何回目かのときにうなされて起こされて朦朧としたなかで父が夢のように、その時のことを語っていました。

「そんなことをしても詮無いことなのに、母親というものは。。」

父はその空襲の後すぐに召集され、一旦郷里に帰ってから広島の大竹に向かった。駅舎で見送りの祖父が「死んで戻って来るかカタワになって戻って来るしかないんだろう」と呟いたそうです。

幸運なことに数ヶ月で終戦となり、父は(内地訓練中)無事帰還できました。

日本は敗戦国となる。

私は昭和34年生まれなので戦争を知らない。どころかひと回り上の団塊世代も知らない「戦争を知らない子供たち」です。

『細雪』は昭和16年までの蒔岡家の物語ですから空襲とか戦争の描写はほとんどない。軍部の圧力はあったとしてもなぜGHQは『細雪』を危険視したんだろうか。日本の文化が危険だった。

NHKスペシャルで『映像の世紀』とかありましたよね。映像と共に流れる加古隆のメロディーがなんとも感情を揺さぶれる。気が遠くなるほど切なくなる。

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NHK【映像の世紀】より「オープニングテーマ」(パリは燃えているか)/音楽:加古隆https://youtu.be/gLu5dhkHkbs?si=DXr19tB6pT8fjPNr @YouTubeより

20世紀は激動でした。しかし21世紀も激動です。それは幕開けの9.11から始まり中東でウクライナでコロナで、そして欧州で揺れ動いている。それをメディアは報じない。戦前のように、そして私たち一般国民は気づかず無関心で無関係を装っている。

歴史は繰り返すといわれるが、そんな迷信じみた愚言は真っ平ごめんだ。

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時代は確実に変わろうとしている。うねりをあげて。ドイツでもフランスでもイギリスでも仕組まれた運命とやらに抗い立ち上がっている。人間の叡智を賭けて。時代の流れはどちらに転ぶかはそれぞれの国民の意志次第。

政治に無関心であっても無関係ではいられない。

まだ、日本は間に合う。

現実逃避はいいかげんにやめて、向き合いましょうよ。