あかんたれブルース

継続はチカラかな

男の色気の秘密とは

I&U研究所(残酷な話-9 男のお色気)


今朝の『ごちそうさん』は天神祭りの奇跡に
ジーンときちゃいました。
人ごみに隠れて家族を見守る父=師匠
近藤正臣のやさしい面持ちがよかったわあ。
とってもよい枯れ具合で色気のある役者だ。

団鬼六を偲び
優しい男に想いを馳せて
一昨年に癌で死去した原田芳雄
色気とやさしさについて

男っぽくてワイルドなイメージの原田芳雄のどこに
やさしさを感じるのか?
1975年の『祭りの準備』で近所の泥棒役を演じた。
兄弟揃って泥棒で兄貴が服役中に
その女房といい仲になってしまう。
根っからの泥棒で、この頃既に
原田芳雄の役者としてのキャラクターは
確立されていたわけだ。
とても板についていましたよ。
劇中で身体障害者の幼友達を「無理強い」して
女郎屋に繰り出すシーンがあります。
提灯が揺れてね。
それはそれは幻想的でポエムのようでした。
ところが、娼婦がその障害者を拒絶するのだ。
食い下がる原田・・・
なんとも残酷なやさしになってしまった。
とても印象的でした。
乱暴で大雑把で大胆で行き当たりばったり
イザとなったらなんでもやっちゃいそうな
でもなんか憎めない、そしてなんかやさしい。

彼が演じる役、演技とは別に
この男臭い役者が
優しい男ではないかと予感したのは
1990年の『浪人街』
で惚れた女を助けにいく姿もよかったのですが
この作品で親友の石橋蓮司が主役級の役柄で
数ある俳優を喰う殺陣で後半部分を独占する。
まさに圧巻!
そのことを誰よりも喜んでいたのが原田だった。
石橋蓮司の主演作と賞賛し
石橋蓮司は俺の知っている役者の中でも
 最高の役者だ」と絶賛していました。
癖のある顔で癖のある役、(凶悪な)脇役
ばかりの裏方人生の石橋を気遣っていたのが
とても印象的でした。
他人を誉めるって、難しいものだと思うよ。
真心がないと伝わらない。
それがあったんでしょうね。わたしには
それがビンビン伝わりましたよ。

で、亡くなる前の年だったかその前後に
森本レオ原田芳雄のことを語っていた。
森本の父親は名古屋の老舗料亭の板前で主人だった
そうですが終戦後のデノミで資産を失ってしまった
そのことで精神的におかしくなってしまい
家族はとてもつらい思いをしたそうです。
俳優業をはじめて上京しても
森本レオのつらい十字架は・・・ずっしりと
重いわけです。まだ若いしね。
もう死んでしまいたいと何度も思いつめたそうです。
そんなときにね、原田芳雄がそばにいて
いろいろ励ましたり宥めたり
支えてくれたんだそうです。
いろいろあるよね、って

それに救われたんだと
森本レオがあの口調で熱く語るわけだ。

原田芳雄
色気のある役者でさあ
彼のいったいどこにそんな繊細なやさしさが
隠され育まれていたんだろう・・・
東京都は足立区出身
そういえばたけしも足立区かあ
東京の下町はそういう人を育てる土壌があるのかな?

やさしさと色気って相反するものじゃないのか
いや、もしかしたら
色気って、男の色気ってものは
そういうやさしさから香るものなのかもしれない。

わたしが最後に原田芳雄の演技にしびれたのは
白州次郎のドラマで演じた吉田茂だった。
こういう役も演じられるのなら、
これからも楽しみだなあと。
と思ったら死じまっちゃったよ。

原田芳雄の葬儀
弔辞は石橋蓮司が読んだ。