明治イイ女列伝(2)貞奴-2
こっちの写真のほうがいいですね。
大変な美貌だったのは確かなんです。ヨーロッパで香水が売られたくらいですから。
日本人離れした顔立ちだったとか。写真をみると身長はさほど高くはないですね。
これで160センチ以上あれば相当なデカ顔。アウト!
30歳を越えてこの顔立ちですから魔性の女の部類ですね。
日本橋の大店の娘でしたが商売が破綻すると芸子に売られます。
霞町で「奴」と名乗って売り出します。その美貌からエロ宰相・伊藤博文が落籍。
乗馬中に野犬に襲われたところを福沢桃介に助けられ、恋心萌える。。。
しかし、運命は決して結びつけようとはしません。
そして、隅田川で海水浴中に溺れて危機一髪! 常に美女には危険がいっぱい。
それを助けたのが川上音二郎。運命の男との出会いです。
川上は福岡出身の青年民権運動家。
「オッペケペー節」で藩閥政治を批判するキワモノ役者兼演出家兼プロデューサー。
なぜか貞奴、この才能はあってもお金のない若者に引かれます。
伊藤博文の許しを得て二人は結婚。
川上一座は一世を風靡しますが、経営に失敗。そして、海外へ。
貞奴の素敵なところはその苛烈な運命に対して、
常に自分の意志で愛する夫・音二郎に尽くす情熱です。それは健気とは違う。
下手をすると音二郎を引っ張っていくような感じ。
それでいて自身の名声とかには欲がない。無関心
我が儘で気っ風がよくて、情熱的で自由奔放。
明治という時代に自分の意志を貫き通す彼女の生き様は素敵です。
最愛の音二郎が死んだ後、彼女の前に現れたのは、あの福沢桃介。
貞奴は桃介をスポンサーにして引退興行を打つと女優を廃業してしまいます。
作家・杉本苑子は『マダム貞奴』で福沢桃介への対抗心を彼女の生涯のスタンスとしています。
利己的な桃介のダンディズムに対して献身的な音二郎への愛の形をそういう風に解釈したか。
晩年の貞奴が桃介と結ばれたことは事実です。杉本苑子は肉体関係はなかったとします。
私的にはどちらでもよいのですが、出発点の福沢桃介への対抗心がどうもしっくりこない。
桃介の現在の人物評価にも原因があるのかもしれません。
小島直記の『まかり通る』(桃介の弟分・松永安左ェ門主演)で、
松永に「これまでの女と違うんだ」という桃介の告白シーンがあります。
また、常に利用(小バカに)していた松永の人間的な成長に刮目する桃介。
貞奴とプラトニックだったかどうかよりも、そこにも真実の愛があったほうが素敵でしょ。
私は貞奴の自由に生きる女性という姿に魅力を感じます。
貞奴は桃介を愛し、音二郎を愛した。すべて本気。
彼女にとって運命なんて、その時々の舞台・場面の設定変更でしかなかったような
そんな気がします。気がね。