大阪恋しぐれ
新世界を歩いた。
いい色合いにくすんでいる。
昼間から将棋を指す三吉の末裔たちを追い越して
見上げれば通天閣だ。
あっちこっちにビリケンさんが足が痒いと笑ってる。
天王寺の動物園を迂回して
一心寺の門を潜る。
ふたりで来ようといった約束をはたせてよかった。
ここに女の母がいるという。
どの菩薩様に預けられたのか・・・
昭和40年にあたる菩薩様を探す。
蝋燭と線香を買って火を点けた。
小さな灯が風に揺れている
消えるかな?
隣同士の夫婦灯がやがて大きくなっていく。
不思議な光景だった。
仏様に一生懸命お祈りしていたね。
なにを祈っていたんだい。
秘密。
ああ、そう。
木陰の風が気持ちいい。
帰り道、また雨が落ちてきた。
心斎橋で買った三百円のビニール傘を差した。
女は俺の杖になるという。
その女を引き寄せて肩を抱いた。
杖を抱くように
大阪は時雨れている