茂丸は結局、伊藤を殺すことはできませんでした。
彼が九州で知り得た伊藤の情報とは今で言う「日刊ゲンダイ」とかの
夕刊紙の域を出なかったのでしょう。
実際の伊藤という人物とそれとを照らし合わせたギャップに戸惑ったようですね。
杉山の青雲の志に横たわっていたものには「ジェネレーションギャップ」もあったでしょう。
上の表をご覧ください。これは西郷南洲を起点に作った簡単な世代年表です。
杉山は遙かに若い第五世代にあたりますね。この直後に盟友の契りを結ぶ頭山満とは
9歳の差がありこの表では2世代の格差があります。(単純に10年ではない)
私たちの世代は団塊の後世代で、その後に新人類、バブル世代、バブル崩壊世代が続きますが、
我々の世代と団塊世代の格差のひとつに「学生運動の有無」があり、これが大きい。
杉山も戊辰戦争、西南の役などの日本内乱に参加できたかどうかが大きかったはずです。
かといって、そこで命を落としていた確立は非常に高いでしょう。
ギリギリのラインだった頭山の獄に繋がられたから命拾いしたようなものです。
若き杉山は己の身の置き所に窮して「テロ」という行動に奔ってしまう。
短絡的といってしまえばそれまでですが、人生には生まれ落ちた時代のとの巡り合わせも
大きく関係するものです。幸いにも杉山は山岡鉄舟や伊藤博文という心ある先輩に巡り会う
ことができたおかげで、テロリストという生き方を選択せずにすみました。
彼はこの後、「一人一党」という道を歩むのですが、それに大きく影響したのが
同郷の巨人・頭山満であり、生涯の盟友との出会いです。