以前、相棒だった〇さんは大変な頭脳の持ち主でした。
某有名進学校から法科に進みますが、尊敬する講師が東大に移られると
その講師を追って東大の編入試験を受けて合格。今度は法学科ではなく医学部へ。
また、その編入前に司法試験に合格して、という「おまけ」付で。
何人か東大出身の人間を知ってはいますが、彼ほどダイナミックで人間臭いタイプを
私は知りません。
彼は世の中に挑戦したかったようです。
また、自分の弱点というものを若い頃から見つめていた人でもありました。
その彼がこの世の中で生きていくための武器が
「法律」であり「医学」であったとも聞きました。
彼の父親は剣道を極めた方だったそうです。
彼が若い頃、
父親はこの才気走った息子にこう言って戒めていたようです。
剣には「活人剣」と「殺人剣」というものがある。
おまえの剣はいまだ「殺人剣」ではないか。と
〇さんはそういって「活人剣」の意義を熱心に私に伝えました。
もともと剣とは人を殺傷するものです。けれども日本人はすべてのものに
「道」という哲学を加味して、この世の法則を解き明かす手段や道具にしてきました。
父親と息子はどこかで相容れないものでもあります。
「活人剣」を諭す〇さんにしても他方の達人でもありました。
だからこそ、私にあれほど熱心にそれを伝えようとしたのかもしれません。
どんな物事にも両側面があると書き込みましたが、その一例です。