あかんたれブルース

継続はチカラかな

森鴎外というどうしよもない権威主義者

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 森鴎外には気をつけろ!
 こう警告を発したのは内田魯庵(明治の編集者で評論・翻訳・小説家)でした。
 とにかく鴎外と言う人は希代の論争家でウルサイ人だったようです。

 ただウルサイだけじゃない。その論法というか批判の手腕は天下一品で苛烈執拗でした。
 とにかく論争になると「しつこい」。ウンザリしちゃう。
 鴎外はそんなことお構いなしで「勝つ」戦略を緻密に繰り出していく性癖です。
 私のマンションにもヤメ検の弁護士爺がおりますが大変なクレーマーで質が悪い。
 このテのヒトはなまじ法律とかの知識があるから始末が悪いものです。

 鴎外はペンネームで本名を林太郎と申します。
 当時、日本随一の審美哲学者として美学の最高権威と自他共に認められた人物です。
 彼の本業は陸軍軍人。
 といっても軍医なのですが、最終的にはその最高の地位である陸軍軍医総監まで登りつめた方。
 執筆活動を平行したからといって甘っちょろい人ではありませんでした。

 そんな了見の狭い人間を「野暮」と申しますが、仮にそんなこと正直に口を滑らせると
 大変なことになってしまいます。
 事実、大阪の無名な同人誌で山田さんという方がそれをやっちゃった。もう収拾がつかない。

 鴎外という人物はとにかく自分が
 自分以外の日本人に批判さてたり、揶揄されることには
 我慢がならにようです。
 なぜか?
 だって、彼は東京帝国大学医学部からドイツ留学を経験した
 当代随一のアカデミックの権化だったから。
 なのだそうです。

 当時の東京帝国大学薩長に次ぐ第三の派閥でした。
 特に医学(部)はドイツに留学することを最大の名誉と考え、実際にドイツは19世紀から
 世界最高の実力と地位があったわけです。

 で、鴎外はそこで医学、文化・芸術を肌身に染み込ませて留学帰国したわけです。
 で、鴎外は確信しています。こんな極東の発展途上国に文化なんぞ存在しないと。
 で、鴎外自身日本人でありながら帝大医学部でドイツ留学のない日本人を軽蔑したわけです。
 そんな確信犯だから論争になっても負ける訳がありません。
 最後は殿下の宝刀の(相手は読んだことも見たこともない)
 欧州の原書を引き合いに出してトドメにするのです。(こんな人いますよね)

 さて、そんな厄ネタが何を言おうが知らん顔をしてればいいのですが、
 彼が林太郎という軍医の立場で論争を展開させた「脚気問題」というものがあります。
 これが大変な厄災をもたらせてしまう。

 日露戦争日本陸軍の戦死者は約4万7千名。内、旅順攻略のものが約1万6千名です。
 が、これ以外に約2万8千名の死亡者がありまして、その原因が「脚気」です。
 陸軍全体の脚気患者は25万人とも言われております。
 また戦闘戦死者のなかには当然脚気患者もいたわけですから
 この厄災は相当なものだと思いませんか。
 対する海軍では脚気患者はほとんどいなかった(105名)。

 この厄災の立役者が森林太郎つまり森鴎外なのです。

 写真上が内田魯庵
   下が森林太郎(鴎外)