あかんたれブルース

継続はチカラかな

暑中お見舞いと残暑見舞いの桶狭間

封印できない贖罪


 私は決して子供は作らないと、若い頃に誓ったことがあります。

 ひとつは人間として自信が持てなかったということもあるでしょう。

 二十代の頃はただがむしゃらで漠然とした指針しか持ち得なかった。
 同時に、いつになれば大人というものに成れるのか不思議に感じてもいました。

 父親との確執など色々な問題もあって、結婚さえも考えていませんでした。
 妻と同棲して2年ほど経って、駅前のマンションに引っ越しを考えた時に、
 夫婦の証明が必要だったので「婚姻届け」をだしたようなものです。

 それから暫く経って、妻が妊娠します。

 正直なところ戸惑いました。

 私以上に、妻も戸惑ったようです。

 「産もうか」私の言葉に妻は首を横に振ります。
 そういった私もどこまでが本心だったのか分かりません。

 二人はまだ若く、すべてにおいて未熟だったのだと思います。

 私たちは罪びとです。

 私にとっての結婚という契りは神という存在を敵にまわす旅立ちのようでした。

 その出発点から巡礼のようであり、その呵責に駆られ苛まれて
 言葉にすれば、石を投げられ二人は追い立てられるような
 影を背負ってしまった。
 私にとっての結婚とはそういうものでした。
 だからタフでなければやっていけない。

 私と妻はそのときに、一生子供は作らないと誓いました。

 もう、22年前のことです。


 それから13年後、私たちは人の親になります。

 あの不思議な母犬に出会ってから、妻は再び妊娠しました。

 その時、私は迷わなかった。そして、あの時の誓いを反古にしました。

 高齢の初産ということもあったのでしょう。
 破水の知らせを聞いてから妻の出産の気配はなかなかありません。
 そして、ようやく兆候が現れると妻の微弱神通は40時間も続きます。
 その晩、私は妻の背中を一晩中さすり続け、陣痛と陣痛の波の底のひとときの安息に、
 妻は眠り、私はトイレに駆け込んで泣くのです。そして奮い立って励まし、さすります。
 今思えば滑稽な出産の想い出です。

 夜があけて、その日のお昼前に、我が子と対面しました。
 私がこの世で知った最高の慶びがこれです。

 私たちは親になり、大人になったような気がしました。






 「どうしたの?」

 不意に美咲の声で我に返ります。

 「いや、ちょっと。なんだビールもう飲んでしまったのかい。お代わりをもらおう」

 「いいよ。それより、お父さんと同じものがいいなあ」

 美咲は私の日本酒を悪戯っぽく指さします。

 「ははは、じゃあ、お猪口をもうひとつ頼もう」

 私は冷酒用の硝子のお猪口ともう一本お酒を注文しました。
 美咲が少し体を持たれ掛けて来てきます。

 寄り添う柔らかい感触が私を覚醒させていきます。


つづく

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(此処から下は前の記事なので関係ありません)

 御盆休みでしばらく旅を打ってきます。(渡世人か?)
 南フランス、ニースの隣の草加という避暑地です。(南サイタマ、ヤシオの隣だろ)
 16日頃帰国する予定です。
 今年の連休明けから皆勤賞(最初にポカやりましたが)で
 親のカタキのように更新させてきましたが遂に途切れてしまいます。
 残念無念。

 休み明けからはもっと真面目に明治をやります。
 杉山茂丸の紹介も滞っておりました。
 肩の凝らないものにできればいいのですが。

 また十八番の東映実録路線から日本の戦後史も語りたいと存じます。
 今年もWOWWOWでやるのかなあ?
 みなさん『仁義なき戦い』未観でしたら是非レンタル屋へ。

 これまで観た映画の最高の一本!という記事を作ってみました。
 是非、みなさまの最高の一本を教えてください。
 お彼岸にはブックでもやります。

 夏風邪流行っているそうです。
 西瓜の食べ過ぎ、冷酒・ビールの飲み過ぎにはお気をつけください。
 ここで一句
 「親の意見と冷や酒はその場にゃ効かぬが後で効く」