あかんたれブルース

継続はチカラかな

奇跡のドミノ倒し「男たちの祭」燃え上がる

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 この作品制作当時、つまり1972年頃ですか。
 日本映画は衰退の一歩をたどっていました。
 日活、大映の倒産です。一時両社はダイニチという映画会社を作りますがダメです。
 それ以前に多くの俳優たちがテレビや他社に仕事を求めました。
 これが、もうひとつの奇跡。日本映画史上かつてない東映・日活・大映の名優の共演です。

 日活は渡鉄也、小林旭、そして、金子信雄(山守)
 大映からは成田三樹男(松永だ)など
 俳優座出身ですが東宝からと位置付けならば田中邦衛ですかね。(槇原です)
 第二東宝も潰れています。とにかく映画業界は大不況
 松竹退社の三上真一郎はフリー。(第一作で新開役、頂上作戦では憎っくき川田!)
 あと寅さんの義弟ひろし(前田吟)も第二作で出演。
 東映からは東京で現代劇(メインは京都で着流し)一応みんな若手ちょっとB級の
 菅原文太渡瀬恒彦、山城新吾、梅宮辰夫、千葉真一。若手じゃないけど丹波哲郎写真だけ!
 京都からは若手二世俳優として松方弘樹(父・近衛十四郎)。北大路欣也(父・市川歌衛門)

 で、ですよ。主人公の広能は最初は渡哲也がやるはずだった。なんとまあ、、。
 当時、渡哲也はNHKの大河ドラマ勝海舟」の主役でしたが、病気で倒れてしまします。
 で、ですよ。主役が文太にまわってくる。大河は松方弘樹が代わって不衛生な海舟を好演。
 弟の渡瀬恒彦が演じたるには若すぎたか、、、。
 また、当初は広能を松方が坂井鉄也を文太がやるはずだったそうです。坂井を主役として。
 まさかこんなに大ヒットするとは思わなかったのでシリーズ化なんて想定外。
 で、なんだかんだで役柄は逆転して落ち着いたとか。よかったよっかた。
 
 敵役の山守役は最初は三國連太郎を予定さしてましたが、東映岡田社長が
 「三國じゃ客が集まらない」といって金子信雄になったとか。
 金子はこの脚本を読んでやる気満々!(これは俺だと思ったのでしょう)
 ところが、ここで金子も病気でダウン、ダメだ、代役探そうといったその時に
 「わ、私に是非、そ、その役を、、、、」と入院先の病院から金子が這いずって来たとか。
 奇跡ですよ。
 神様がみんなに何かをさせようと目論んだとしか考えられない。

 笠原はこの作品を「群像劇」に仕立てていますから役者が大量に必要とされました。
 その自給の関係から普段は陽の目をみない大部屋俳優にも出番が廻ってきます。
 川谷拓三や志賀勝など。室田日出男と後にピラニア軍団を結成する面々。
 室田も大部屋俳優ですが、深作に以前から買われていて『トラトラトラ』などでいい役を
 もらっているので別格か。第二作からの登場に御期待ください。
 昼夜を問わず「深作組」の男の祭が演じられるのですね。活気熱気ムンムン。
 異様な空気。そして、毎晩飲んでいたそうです。極限状態。いつ寝てる?

 そして、突貫工事のように『仁義なき戦い』は完成。
 1972年、公開は翌年の1月正月映画の二番手です。

 上は、「仁義」の渡哲也主演に用意されたポスター。嘘!勝手に作ってみました(涙)。
 下は公開前の宣伝新聞広告「公開まであと二日」ですよ。胸が高鳴ります。あれ私だけ?
 併映は『(スケバン)女番長』(なぜか涙)。

 しかし、公開前の試写室で激怒する男!

 笠原和夫
 「なんだこれは!あの野郎、深作の馬鹿、俺のホンを滅茶苦茶にしやがって」
 笠原にとってこの深作のスピーディーな展開というか構成が理解できなかったそうです。
 怒鳴り込んでやろうと思って席を立ったのですが、周囲の反応がよい。
 あれ?
 で、思い返して、今度は公開後劇場で観たそうです。
 面白い。
 それに観客も喜んでいる。狐につままれたような大脚本家でした。
 そして、はやくもシリーズ化として第二作の執筆依頼が舞い込みます。
 笠原の危難と悶絶は始まったばかりでした。