高校に入学すると色々な地域の友人ができます。彼らとは中学が別々だったので新鮮でした。
そのなかの一人に養豚場の息子がいました。
初めて友人に連れられて彼の家に遊びにいったときは強烈でした。
それは、臭いです。
豚小屋の中にあるという訳ではないのですが、広い敷地の中に豚舎と自宅があります。
離れていても臭いは柱や畳みに染みこんでいます。
鰹節製造工場の家とは又違った、、、臭いでした。強烈です。
口には出しませんでしたが、よくこんな環境で生活できるなあと思いました。
ところが、人間の感覚とはいい加減なもので、何度か通っているうちに慣れちゃう。
彼の親は私たちを認知してくれると、手伝いに扱き使ってくれます。
さすがに残飯回収は手伝わせませんが、、、。
その日、息子を手伝いに連れ出すと同時に私たちも駆り出されます。
場所は近隣の農家。
自営で養豚をやっている所です。
小型トラックの後ろに乗ってお気楽な私たち。
いったいなんのお手伝いをさせられるのか皆目想像力ゼロ。お馬鹿な16歳。
農家に着いて、挨拶をすると、そこの豚舎に案内されます。
今年生まれた可愛い子豚たちが20頭ほど。でも異様に騒いでいます。
なんか不吉な事態でも生じたのでしょうか?
友人の長男にあたる人が白い鞄をあけると薬品と脱脂綿を取り出します。
そして、歯だけの安全剃刀。 んん、カミソリ?????
友人はお兄さんに目で合図を受けると子豚の囲いに入り一頭を捕まえ、
ひっくりかして、押さえつける。
そこにお兄さんが薬品を湿した脱脂綿で子豚の可愛いキンタマちゃんを拭きます。
消毒ですね。マセた子豚はこの時一段と高い絶叫を「ギビィーーーーー!!!!」
そして、手際よくそのキンタマ袋を揉みほぐすようにして確認すると、
剃刀でスー、スーと二本の立て筋を付けます。
そこから、可愛い子豚のキンタマちゃんがポロンポローンと落ちます。
いや、まだ落ちません。その先に白い筋があってそれにつなぎ止められている。
その筋をサッと剃刀でカット。
その筋を片結びで結んでいっちょあがり。一匹か?一豚か?二個玉か?
手伝いって、子豚の去勢だったんですね。。。。。
私もやらされましたよ。だって、20頭もいるんですからね。
子豚も必死です。此奴ら知っているんですよ。捕まえるの一苦労です。
2、3回転びました。服はドロドロ。
それにしても、こんなに小さいのに凄い力! これも土壇場のバカ力?
・・・・・・
人間に生まれてきて良かったと、心底、思いました。
一仕事終わると3時のおやつにと菓子パンを渡されました。
パイ生地にアプリコットがのっているお洒落なパン。
最近できた街のスーパーに出店しているパン屋さんのやつです。
ひと汗かいた後のお茶は最高です。かぶりつこうとするとお兄さんから止められました。
上のフルーツは食べるなというのです。
そう、これは残飯として回収してきたものなのでした。
人間なんてララアラ、ララ、ラララアラ
拓郎の歌がラジカセから流れていました。眩しい16歳