母犬の事情と父親の気持ち
子供を持つ気持ちはありませんでした。
一番の理由は親になる自信がなかったからだと思います。
派手に気楽に楽しく生きていければいいと曖昧な人生を送っていました。
毎日のように飲み屋をハシゴしていました。
酒を飲むことが仕事だと勘違いしていたんですよね。
ところが、35歳を越えたあたりから、何をやっても物足りない。
そして、街角で見かけるヨチヨチ歩きの幼児に視線がいきます。
可愛い。
正直、こんな感情はいままでなかったんです。
そんな頃の寒い晩でした。
いつものように飲んでの帰り道です。割合に早い時間帯でしたね。
地元の駅からフラフラと家路を目指していると小さな犬と目が合いました。
お腹が大きい。乳も張っている。妊娠しているんです。
ガード下の居酒屋の店員から何か餌をもらっているようでした。
それを眺めていたら、私の方に近づいて来る。
もらった餌では足らなかったんでしょうかね。
鼻面をなでるとシッポをふって私の手を舐めたりする。
で、ここで待ってろよ。とテレパシーを送って、(人通りはなくても声には出せないでしょ)
近くのローソンに引き返して、唐揚げを買ってきました。(辛くないやつね)
幸いにその母犬はまだその場に座って待っていてくれていました。
狭い道なので車は来ないのですが、その端っこの電柱の側で餌をあげました。
しゃがんでその食べっぷりを眺めていたんです。あら?もう食べちゃったの?
もう一度、コンビニに戻ってソーセージを買って来ました。
さて、それをあげて、ふとあたりを見渡すとなんとも寒々しいんですね。
こうやって誰かから餌をもらって此奴は子犬を生むのか。野良犬なんて珍しい。
迷子なのかね? 首輪もないし、さっきの居酒屋で飼ってるようでもない。
と、小さなこの犬の視線。おい、そんな目で見つめないで。
なんか少しの間に情が移ってきちゃった。
おまえ、うち来るか?
そして私は家に向かって歩き始めます。振り向いて手招きするとついて来る。
まあ、飼うのは無理かもしれないけど、うちのベランダでお産するのもいいかもね。
そんなことを考えながら、ふり返りふり返り。ちゃんとついて来ます。シッポをふって。
餌には不自由しないだろうし、このガード下よりましでしょ。
後は後でどうにかなるよ。
ところが、大通りの横断歩道に来るとピタッと彼女の足が止まっている。
あれ?っと引き返してみると、じゃれつくように私の手を舐めるのですが、
信号は赤に替わってしまった。
それを何回も何回も繰り返して道路を渡らせようと試みますが、
どうしてもそこから先に行こうとはしない。
そして、私は彼女を見失ってしまった。
もう一度、引っ返して探そうと、横断歩道の中程まで渡って、
気持ちを変えました。
あの横断歩道をどうしても渡れない理由が彼女にはあるんでしょう。
そんなことを考えながら夜道を歩きました。
寒い夜でね、月が燦々と瞬いている。
それからしばらく経って妻が妊娠します。
私は父親になるのです。
写真は記事と関係ありません。
「不思議な猫の訪問」のクリ2世です。
アルバムを探したら、これと後ろ姿の2枚がありました。
上の記事は彼女と別れてから11年後のお話ですかね。
一番の理由は親になる自信がなかったからだと思います。
派手に気楽に楽しく生きていければいいと曖昧な人生を送っていました。
毎日のように飲み屋をハシゴしていました。
酒を飲むことが仕事だと勘違いしていたんですよね。
ところが、35歳を越えたあたりから、何をやっても物足りない。
そして、街角で見かけるヨチヨチ歩きの幼児に視線がいきます。
可愛い。
正直、こんな感情はいままでなかったんです。
そんな頃の寒い晩でした。
いつものように飲んでの帰り道です。割合に早い時間帯でしたね。
地元の駅からフラフラと家路を目指していると小さな犬と目が合いました。
お腹が大きい。乳も張っている。妊娠しているんです。
ガード下の居酒屋の店員から何か餌をもらっているようでした。
それを眺めていたら、私の方に近づいて来る。
もらった餌では足らなかったんでしょうかね。
鼻面をなでるとシッポをふって私の手を舐めたりする。
で、ここで待ってろよ。とテレパシーを送って、(人通りはなくても声には出せないでしょ)
近くのローソンに引き返して、唐揚げを買ってきました。(辛くないやつね)
幸いにその母犬はまだその場に座って待っていてくれていました。
狭い道なので車は来ないのですが、その端っこの電柱の側で餌をあげました。
しゃがんでその食べっぷりを眺めていたんです。あら?もう食べちゃったの?
もう一度、コンビニに戻ってソーセージを買って来ました。
さて、それをあげて、ふとあたりを見渡すとなんとも寒々しいんですね。
こうやって誰かから餌をもらって此奴は子犬を生むのか。野良犬なんて珍しい。
迷子なのかね? 首輪もないし、さっきの居酒屋で飼ってるようでもない。
と、小さなこの犬の視線。おい、そんな目で見つめないで。
なんか少しの間に情が移ってきちゃった。
おまえ、うち来るか?
そして私は家に向かって歩き始めます。振り向いて手招きするとついて来る。
まあ、飼うのは無理かもしれないけど、うちのベランダでお産するのもいいかもね。
そんなことを考えながら、ふり返りふり返り。ちゃんとついて来ます。シッポをふって。
餌には不自由しないだろうし、このガード下よりましでしょ。
後は後でどうにかなるよ。
ところが、大通りの横断歩道に来るとピタッと彼女の足が止まっている。
あれ?っと引き返してみると、じゃれつくように私の手を舐めるのですが、
信号は赤に替わってしまった。
それを何回も何回も繰り返して道路を渡らせようと試みますが、
どうしてもそこから先に行こうとはしない。
そして、私は彼女を見失ってしまった。
もう一度、引っ返して探そうと、横断歩道の中程まで渡って、
気持ちを変えました。
あの横断歩道をどうしても渡れない理由が彼女にはあるんでしょう。
そんなことを考えながら夜道を歩きました。
寒い夜でね、月が燦々と瞬いている。
それからしばらく経って妻が妊娠します。
私は父親になるのです。
写真は記事と関係ありません。
「不思議な猫の訪問」のクリ2世です。
アルバムを探したら、これと後ろ姿の2枚がありました。
上の記事は彼女と別れてから11年後のお話ですかね。