かなりやの館(3)
その夜の宴、第一次接近遭遇は喧噪のからさわぎで一応終わりました。
東山さんは最初から最後までご機嫌で、私はただただ、面食らっていました。
別れ際に「エリザベス」と命名された不可思議に物思いに耽っていた私。
おやすみなさい! ワタシはE電で帰りま~す。って
へっ、東山さんは渋谷スクランブル交差点の向こうで大きく手を振る。
「馬太郎さ~ん、ありがとう。大好き!」
それから、また数ヶ月。
そのPR誌が突然休刊になります。こんなとき編プロサイドは何も教えてくれない。
良いときはいいのですが、こういう場合、普段立派な事を宣う人はからっきし不義理をです。
私は真相を知りたくて東山さんを原宿の「ブルーミングバー」に呼び出しました。
居酒屋だとまた爆発されそうなので、ある程度雰囲気のある場所をと考えたのです。
(ここは女性しか誘わない)
仕事の話が一段落して、カウンターで彼と二人。(今日はおとなしいな
・・・
東山さんのカミングアウト
彼は自分のひ弱な肉体や性格にコンプレックスを感じていたそうです。
高校生の頃、たくましい同級生の肉体が眩しい。(?
「それでね、体育の時間になるとファンデーションとか塗るじゃないですか」
?
なぜ?「じゃないですか~あ」って、普通塗らないよ。
彼曰く「青白い肌が恥ずかしくて褐色に変身できるファンデーション、、、」
「わかるでしょう」(いや、わからんな)
体育の時間ですから夏なんかは体育館でも汗をかくそうです。
汗が流れるとそのファンデーションが溶けてしまう。斑になる。筋ができるそうです。
東山さんは必死に「汗よ出ないで」と努めて、そして祈る。
膝を折る独特の体育すわりで俯いて「はやく時間が過ぎて~えええ」と。
でも汗が出る日は汗がでるそうです。(そんな、、、。
体育の授業が終わると同級生に気づかれて、「お前またやったな」と
イジメられるそうです。(イジメられる側にも問題ありますね。
一番悲しかったのは、憧れの彼に笑われたことだったとか(だからやるなよ
と、まあ、そんな話をしんみりと聞いていたわけです。
店を出ると、東山さんはまた別の東山さんに変身。あのマリリンね。
チュウ。
一瞬の出来事でした。
唇を奪われてしまった。第二次接近遭遇だな、、、。
まったく油断も隙もあったもんじゃない(怒)。
「ワタシはE電で帰ります。おやすみキャサリン」
E電とは国電がJRに変わった頃についた愛称、山手線のだったかな?
当時、そんな「名称」を使う人はマレでしたが東山さんはそう言いました。
キャサリン?
俺はエリザベスじゃなかったのか!
つづく
タイトルは「変態挽歌」でしたが改めました。
四文字で決めようかと思ったのですが、、、。
次回は花見の悲しい話です。
ここで「変態無惨」を使いたかったんだよな。惜しい