幸子の唄(2)
幸子が若い頃、まだカトウヨーカドーにいた頃の話です。
休日、ドライブをしたくってレンタカーを借りました。
同僚の蘇我さんを誘って、東京で初めて車を運転します。
免許は田舎で取りましたが、すぐ就職で上京したので路上で運転の経験が少ない。
レンタカーを利用するのも初めて。
だからドキドキしたそうです。慎重にスピードを抑えて、徐行で出発しました。
蘇我さんは免許を持っていないので車のことはよく分かりません。
しばらくすると慣れてきたので、もう少しスピードを出してみようと思いました。
でも、なぜか車の速度は前のママです。
アクセルを踏み込んでも前のママ。ずーっと同じ速度で町内を周回しています。
凄い音がしているようですが、速度は変わらない。徐行のスピード。
どれくらい時間が経ったのでしょう。
そのうち、
蘇我さんが異変に気づきました。後ろから白い煙が出ているそうです。
そして、
車も止まってしまいました。動かないそうです。
幸子がレンタカー屋に電話すると、すぐ係の人がきたそうです。
だって、同じ町内を回ってただけですから5分とかからない距離です。
サイドブレーキをかけたままでした。
その車はおろしたての新車だったそうです。
と、親切で優しい係の人は泣いていたとか。
幸子は私の妹です。