梶井基次郎の名作に『檸檬』っていうのがあります。
文学青年シンガー・さだまさし氏がこれをモチーフに歌いました。
昔の話です。四半世紀前の話。
またまた「待ちぶせ」で手引きをした久保君の登場。
私が19歳の時、彼が夏休みを利用して東京に遊びに来ました。もう相当なおのぼりさん。
我が儘な奴で、どこそこに連れて行けとうるさい。はとバスに乗せました。
東京でヘアサロンに行きたいというので先輩の恵比寿のお洒落な店を紹介しました。
彼奴、そこでアイパーかけやがった(爆)。
アイパー(アイロンパーマでパンチパーマの一世代前の地方限定お洒落なヘアスタイル)
洗髪のとき、仰向けになるところを椅子に四つん這いなってうつ伏せにしてたとか。
なんか、九州人って開き直ると傍若無人で笑えません(涙)。
で、彼のどうしても東京でやっておきたい想い出づくりが「檸檬」だった。
さだ氏の大ファンだった彼はその同名曲の歌詞にある
「聖橋からレモンを投げる」という愚行をどうしてもやりたいとききません。
しょうがないので、私は彼と一緒に国電お茶の水駅まで行きましたよ。(行くなよ)
新宿よりの改札から駿河台を下る二本目の路地を左に曲がるとすぐに果物屋さん有り。
そこで、レモンを二個買う。それさえも私は顔に電気が着きます。
お店のおばさんが、又来たなという視線。私の被害者妄想自意識過剰でしょうか(汗)。
二人の青年は対照的です。
意気揚々とレモンを握って闊歩する久保の後を
うなだれてレモンを隠してトボトボと後を追う私。迷いがある。
聖橋の中程に立ったときは足がすくみました。
下の中央線のホームから会社員の男性がこちらを見つめています。ああ、もうダメ。
久保君は上機嫌で、がぶりとレモンをかじるとそれを投げた。(不当投棄だよね)
私?まだ気持ちの整理がつかない(汗)。
なんかとっても恥ずかしいよ~お(涙)
なんで、俺はこんなところにいるんだろう? 此処は何処? 私は誰?
そんな私を訝る久保君。「なにやってるの?」と。
ははは、私は多分怯えた目をしてたんでしょうね。
奴はすべてを悟ったようでした。この臆病者という軽蔑したような目で私を睨みます。
「貸せ」というと、私の震える手からレモンを奪うと、ガリッの音を立ててかじると、
びゅ~ん という擬音を自分で発して空高くレモンを投げたな。
ははは、じゃあ行こうか。って、爽やかに改札に向かっていきました。
なぜか置き去りにされてる私。(久保!お前一人で帰れるのかよ!)
私は臆病者です。