あかんたれブルース

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感激した女の意気地

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愛の十字路 第二章(番外-7)菅野すがの場合



 関東大震災を利用した亀戸事件などの(当局が認めた)危険分子の粛正。

 それ以前の明治43年に「大逆事件」という明治天皇暗殺計画というもがありました。

 その共同謀議の被告として、菅野すがは愛人幸徳秋水と処刑されます。

 明治44年1月。数えで31歳だったそうです。

 
 美しく生まれた娘は、幸せを半分つかんでいる。
 さだが宣った意地悪な風説。

 すがは自分の容姿にコンプレックスをもっていました。

 そして、12歳で母親が死去すると継母に憎まれ鉱夫にすがを陵辱させる。

 父親の事業の失敗から19歳で商家に嫁ぎますが、2、3年で戻されてしまいます。

 それから、

 すがの男性遍歴がはじまる。

 彼女には「文才」というものがあったようです。

 それを見いだす男たちに、まるで契約条件のように彼女は身をゆだねて往きました。

 かといって、すがに彼らを利用する野心は感じられない。
 彼女が性に対して開放的な享楽主義者であったとも思えない。

 その赤裸々な体験の告白を文章に託して発表する反面、
 自分の自堕落を呪い苛み反省している。
 彼女は自虐的な性格だったのでしょうか。

 とは別に、感激しやすい女性でした。

 開かれたジャーナリストの道から資本家と労働者の矛盾を知ると、
 キリスト教、そして社会主義運動へと傾倒していきます。

 ジャーナリストとしての彼女は過激でした。

 そのなかで年下の同僚、荒畑寒村と恋に堕ちます。
 すがを「姉ちゃん」と呼ぶ寒村も彼女の過去の男遍歴に悩まされたそうです。

 そして、すがは最後の愛人幸徳秋水に奔る。

 その頃、寒村は彼女とは別れていましたが、そうなることを予見し、心配し、
 そして、祝福して、そして、呪いました。
 また、多くの同志が獄中に内縁の夫(寒村)がいるのに
 新しい男に奔るすがを妖婦と批判し、幸徳秋水へもその矛先は向かいました。

 そして、大逆事件
 明治天皇を爆殺するという計画で幸徳秋水と菅野すがは逮捕されます。

 拘束されてからのすがは強い。
 最期の愛人秋水をかばい、事件に連座した多くの無罪の人々をかばって闘いました。

 彼女の強さとはなにか。

 彼女はその半生で多くの男性と関係を持ちました。
 宇田川文海や毛利清雅など常に仕事の上司との性的関係を結んでしまう。
 彼女は強いのか? 自堕落なのか?

 私は、菅野すがは自分を探していたように思えます。
 自分を愛したい。自分を認めたい。

 すがはそんな自分を認めてくれる男に感激して、その男を愛しました。
 
 彼女の30年あまりの短い生涯は自分探しに費やされ、
 認められること愛されることに、救いを求めたように思います。



 確かに、幸せとは自分を好きになることに集約される。

 けれども、自分を見つめれば見つめるほど、これは難しいものです。
 それ故に、焦ったり、自暴自棄になったり、また見ないようにする処世を身につける。
 そう簡単にいけば誰も苦労などしない。
 それでも、少し強がって胸を張って歩くところに価値があり、
 そういう自分が心なしか悪くないように思える。
 風は北風、進路は北北西。少しずつ一歩ずつ。


 この記事で番外列伝最終回につき少しリキミましたかね(笑)。
 
 

写真は幸徳秋水と菅野すが です。
余談ですが私は幸徳秋水が好きではありません。
理由は色々ありますが、
二番目の妻との婚礼で席で「ブス」だったとヘソを曲げて姿をくらましたから。
「見合いの時よく見とけばよかった」だって。まっ、こんな粗忽者です。
処刑された二人は別々に葬られます。
確か幸徳秋水は故郷でその「ブス」の本妻さんと一緒の墓に入ってるとはずです。
それよりも、すが、そんなにブスじゃないよ。