性善説と性悪説の間組(4)
まあ世の中なんぞに「金貸し」なんていう嫌われ稼業もありませんわな。
教会の迫害を受けていたユダヤ人が唯一認められた生業。
日本でも在日半島出身の人々はパチンコ屋とこれが活路の一方通行。
職業に貴賎はないといいますが、そのくせみんな白い目で見る。
借りる方の側が悪いケースも沢山あるんですよ。よく銀ちゃんに愚痴られます(涙)。
さて、明治からもう一人。悪名高き紡績の次は、高利貸です。
この頃は借金イコール高利貸ですよ。
犬養毅も尾崎行雄も頭山満も浅野総一郎もみんな高利貸にお世話になりました。
それしかなかったんです。
「冷酷」といわれた高利貸がいました。
その名を乾新兵衛。彼も明治人です。
日露戦争で船成金となりますが、この男、慎重な性格で贅沢三枚は彼岸の彼方。
そして、日本で三本の指に数えられる高利貸となる。
慎重。そう、乾新兵衛の性格を言い表せば慎重そのもの。
彼は慎重に自分を見つめていました。
ホントはね、とってもお人好しで人間好きな性格だったんです。
そんな高利貸って変でしょ。それを一番危惧したのが新兵衛自身だったのです。
新兵衛は仮面を被ります。冷酷という名の仮面で、彼に近づく海千山千の亡者を排除した。
その反面、期限延長、ある時払いの催促なしとか
「残金はもうよろしい、後は帳消しでいいよ」なんてえのもあったそうです。
当然、騙されたこともありますよ。非道い話ですね(涙)。
彼のその姿勢を証明するのに、銀行業を始めなかったことがある。それほどの資金力がありながら。
なぜ?
「借りる者からいうと、借りた金をもう一年待ってもらえば、
充分事業などの見込みが立つ場合があるのに、銀行はそれを待ってやることが出来ない。
それが個人で融資している資金なら、人情をかけてやることは自由だ。」
だって。
つまり、銀行は個人から集めたお金を貸すわけですから、融資や回収に情を挟めない。
冷酷な金貸しの仮面の下に、浪花節の性善説実践家が潜んでいましたよ。
歴史や人物評価が一筋縄ではいかない醍醐味がこれです。
そりゃ、マキアヴェリみたいに、エイヤ!って一刀両断にするのも小気味いいですけどね。
それでも、私は乾新兵衛を素敵に思う。娘だったらお嫁に行きたい(恥)。
乾馬子。ポッ