君はその手に花を抱えて♪ 懐かしいクラフトの歌を口ずさみ
やって来ました。納骨式一時間前の埼玉のとある霊園。
小さなお寺さんの小さな霊園です。
一時間前に私だけ来たのは墓石屋さんと段取り打ち合わせや墓石代の受け渡しのため。
君はその手に花を抱えて♪ と口ずさみ用意した菊の花を桶に、水道の蛇口から水を出していると、
「馬太郎さんですか」と背後から声をかけられます。
振り向けば長身の男。アンパンマンのような顔。しかし、大きい。180センチを確実に越えている。
温厚な表情のこの人が小田桐さん。
初対面ですが、電話とFAXでこれまで何度も交渉して声の主。
そう見積もりを1枚しか送らずに私から怒られたオヤジです。
カタログを送れと言ったら、本物の墓石「石」見本を送ってきて私を閉口させた人。
結果、私の闘志に火か着いて手練手管で値切られて絶句した人です。
でも、もう戦いは終わりました。
二人はもう戦友のような友情さえ感じている。
しかし、小田桐さん大きい。ええ?80歳!
80歳の高齢で身長185センチはなんか不思議です。
オヤジではなく爺様でした。
電話の応対のトロさは資質のせいじゃなく年齢的なものだったのね。
ごめんなさい。小田桐さん、つい都会の絵の具に染まった私は、優しさを置き去りにしていたかも。
彼の後に従って、父親の墓に向かいます。
しかし、小田桐さん、足が長い。なんか自分の顔の高さまでありそう(汗)。
石原裕次郎のようです。顔はアンパンマンだけど。
歳とると「縮む」といいますが、若い頃の小田桐さんは2メールぐらいあった?
そんなこと聞けませんしね(汗)。
あれ?もうお坊さんも来てる! 2時からなのに。まだ1時05分ですよ(汗)。
ここの霊園のお寺は真言宗なので、
わざわざ越谷から浄土真宗のお坊さんを小田桐さんにたのんで呼んでもらいました。
温厚そうなお坊さん。そして小田桐さんと助手のひと。
急いで妻の実家に電話してできるだけ早くこっちに来るようにと。
ふと振り向けば、お坊さんが田園風景を眺めて背伸びの運動をしています。
納骨式は15分早めてスタートしました。
私の家族と妹と母親と義母と義弟の七人だけ。そして小田桐さんと助手さん。
ささやかな儀式はしめやかに進行して、そして終わりました。
ああ、これで安心した。お坊さん有り難う。小田桐さん有り難う。
帰りの車でまた母親がブツブツ言い出します。
まったく年寄りは天真爛漫というか喜怒哀楽がはっきりしているというか気分屋というか。
なになに?聞いたこともないお経だったと言ってますよ。
あのね、田舎のお経と都会のお経を一緒にしないでよ。
なんたって、この日のためにわざわざ呼んでお車代もかかってるんだから。
なに?毎朝?般若心経?
そういえばくれた小冊子にCD付いていたねえ。
般若心経?
と、冊子の裏を確認したら、、、。
越谷市「真言宗●●●」○○寺。
ええ? 真言宗 !
お、小田桐さん、あれだけ浄土真宗だって言ったじゃない!
それに真言宗の寺にわざわざ余所から真言宗の坊主を呼ぶことはないじゃない(涙)。
はっ、そういえば、あそこのお坊さんの悲しい視線。
車は既に環七を走っています。式は無事終わりました。
そして車窓をながめながら 君はその手に花を抱えて♪ と口ずさむ。
確かあの歌は
「まかせてください」
高齢化社会、侮りがたし。