そういうわけで、八甲田山の悲劇を陸軍は隠しました。
それは同時に福島隊の成功も隠したということです。
それでも、陸軍内部では福島泰蔵大尉の能力を高く評価しました。
それに食指を動かしたのが参謀本部です。
来るべきロシアとの大戦の舞台は極寒の満州が舞台となる。
参謀本部は福島大尉を欲しました。が、所属する第八師団長はこれをはねつけた。
師団長はあの立見尚文。
この元桑名藩士は戊辰戦争での大スターで、賊軍でありながらその戦術家としての能力を買われ、
第八師団の師団長として遅咲きながら中将の要職にありました。
第八師団として、福島大尉はその功績は表だってはできないものの
ひとつのステイタスだったようです。
まあ中央の参謀部と地方(弘前)の師団との縄張り争いのようなものです。
福島大尉としては中央の参謀本部に行きたい!
いい迷惑ですね(涙)。贔屓の引き倒し。
福島大尉には栄達以前にもうひとつ移動したい理由があった。
上司との不和です。
皮肉なものですね。八甲田山雪中行軍の演習の悲劇が上司と部下の不和にあったのに、
その別働隊で成功をおさめた福島大尉がこれまた上司との不和に悩まされてしまうなんて。。。
師団はふたつの旅団によって構成されて、旅団長は少将が指揮します。
福島の上司とは旅団長の友安治延少将。旅団はだいたい2万人弱の兵員で構成されています。
旅団長少将は大名お殿様のような存在。
それに福島大尉は噛みついた! どうもノイローゼにまで陥ったようです。
友安少将というのは良きにはからえ」的な「いい加減」なお殿様だったようです。
このいい加減はどっちにとっても結構。
妾の家から出勤してほとんど隊にいない。几帳面な福島大尉にはこれが我慢できなかった。
友安が釣りをしていると血相を変えた福島大尉がその側で大きな石を抱えて投げ入れたとか。
これも尋常ではない(汗)。
二人の確執は軍上層部の知るところになり、友安は第八師団の旅団長を解任させられてしまいます。
そして、日露戦争は勃発しました。
続く