あかんたれブルース

継続はチカラかな

あっ、春団治が泣いてるで!

 エコさんにそそのかされて、我が家の校則(どんな学校じゃい)を破って、

 20年ぶりにひとりぼっちの劇場映画鑑賞して来ました(汗)。

 演目は『色ごと師桂春団治』。

 映画監督マキノ雅弘の生誕記念イベントで、主演は藤山寛美とくれば、
 死せる孔明生ける仲達を奔らす。で京橋まで走った。

 良かったです。とっても。

 その件は策士エコさんの記事を是非。
 「上方噺家 桂春団治を観た!!」
 この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/ecodeoyasai/40723118.html


 桂春団治。名前は聞き覚えあるでしょう。上方落語の伝説の噺家

 カラオケスタンダードナンバー「浪花恋しぐれ」でんがな。
 (唄・都はるみ&岡千秋、作詞・たかたかし、作曲・岡千秋

 「芸のためなら女房も泣かす/それがどうした文句があるか」

 なんたる破天荒! でもこれは初代がモデル。この映画のモデルは三代目。

 芸人は飲む・打つ・買うの三拍子が芸の「肥やし」じゃあ。と一度言ってみたい(涙)。

 まあ、この三代目も三拍子の鉄人で「借金はせなあかん」という名言格言を残しています。

 借金も相当なのもで、再婚した妻(志う)の身代を潰して
 「後家殺し」の異名を持つ男。男子の本懐ですね(感)。

 この春団治を演じるのが当時借金漬けで演劇界を追放されていた藤山寛美

 こういった大物スターは美空ひばりにしても寛美にしても
 何かと問題を指摘されパッシングされるものですね。
 寛美の破産事件や追放騒動はまだ記憶に残っていますもの。

 マキノ雅弘も父親の残した多額の借金を背負ってマキノグループを引き継いだのです。
 春団治・寛美・マキノ雅弘の三人には共通点がある。

 私たちが小学校の頃、
 土曜日半ドンで帰ってきたら必ず松竹新喜劇の舞台放送を観てたものです。

 藤山寛美は面白かった!

 その放送の後は2時から東映時代劇でマキノ作品を鑑賞。
 これが中学から高校1年までの定番として続きます。

 マキノ雅弘って監督は早撮りで有名で、作品も選んだりしない。
 それでも芸事には厳しい目をもっていて「踊り」とか玄人の域。
 高校時代に本屋で立ち読みした平凡社の『マキノ雅弘自伝 映画渡世 天の巻・地の巻』。
 5年後就職したデザイン事務所でこの本と再会。ここで装丁していたんだ。
 仕事をさぼって貪り読んだものです。見つかって怒られました(涙)。


 映画での寛美演じる春団治は関西芸人特有の「破滅型天才芸人」。
 アホな丁稚どんの寛美ではありません。

 共演の長門裕之(母方の叔父がマキノ雅弘津川雅彦実弟)との掛け合いは絶品!

 この二人、マキノ映画の仁侠物にはよく登場します。
 一本気で正義感が強いが、腕っ節は口ほどでもなく、だいたい後半で
 闇討ちにあって死んじゃう役。そして主人公が殴り込みという設定。

 そう、二人のキャラはカブっているのです。

 カブった二人がたたみかけるような大阪弁のカブりあい。もう名人芸。

 春団治に無償の愛を尽くし捨てられるヒロイン南田洋子
 それにまた無償の愛を尽くせど結ばれることはない長門裕之の姿には
 胸が痛みますが、なあに私生活では二人は夫婦だ!と心で叫ぶ(笑)。


 映画のラスト近く。

 放蕩を続けた春団治が酔って、踊って、そして泣く。

 あっ、春団治が泣いてるで!

 ここで終われば名作。しかし、マキノ雅弘は終わらせない。

 最後はドリフのコント風に終わらせた!

 さすがはマキノ雅弘。マキノイズムを存分に堪能したぞ!

 悲しみだけが芸術的でお笑いはどこかに置き忘れ。
 そう、仁侠映画で途中で倒れていったあのキャラたちのように。

 でもね、笑いには力がある。

 小津や溝口よりも、私はマキノが好きだな。

 芸術としての映画を否定はしないけど、
 大衆文化としての映画が好きです。

 そして、「後家殺し」と言われたい。