あかんたれブルース

継続はチカラかな

嫌われる女

 リアル友人の鉄火場君からのリクエストで与太話です。



 渋谷の円山町に事務所があった頃、
 初めて訪ねて来るお客さんを「神泉」駅まで迎えにいきました。

 駅隣のコンビニの前いるといってたのに、それらしき人がいません。

 どうしたんだろう?

 目線で追うけど、、、。ん?

 なんか変な女がこっちを見ている。この辺りはホテル街。
 真っ昼間から俺をターゲットにするなよ。まだ陽も高いし仕事中です(汗)。

 賢明に視線をそらすのですが、強引に入ってくる。

 そして、近づいてくる!

 えっ? あなた、もしかして、私の待ち合わせの人!

 浅川明美と名乗るその女性はハチ切れそうな肉体を黒のボディコンに詰め放題105円。激安店長も青ざめる。

 しっかし、ケバイ(汗)ね。このルージュに塗りたくりは資生堂も大喜び。

 私より、5、6歳上でしょうか。年齢不詳。

 ネットリと、ムンムンで、プンプンのフェロモンタイプでした(汗)。

 落合の奥様の若い頃。って感じです(涙)。

 肉感的で派手な造りの顔立ち、苦手なんだよね(汗)。実は、、、。

 でもさ、天は意地悪で気まぐれ。なぜか私は好まれてしまった(汗)。


 彼女の自慢は「大手出版社を渡り歩いて来た」のプロフィール。

 でも、一緒に仕事をしてすぐに、その空洞化スキルは露見してしまいました。

 それが故に、頼りにされているようでもあります。

 つまりは彼女は職場で浮いている。孤立していたのです。この雰囲気と姿勢では無理もないか。

 私は、根がフェミニストだし、仕事だから、自分の好みなんて表情に出しません。商売ですから。

 当初、彼女の電話は独特で、

 「馬太郎さん、アケミという方からお電話です」

 「えっ? アケミ?」(どこのお店のアケミちゃん?)

 「もしもし、馬太郎ですが。」

 「あっ、アケミです。」(鼻にかけた声ね)

 「なんだ、浅川さんかあ。びっくりするじゃない」(ドギマギ)

 「ごめんなさい。わたし、外資系にいたものだからアケミって呼ばれてて、つい。。。」

 こんな感じ。女性の職場では嫌われるタイプだよね(涙)。

 実際に彼女は孤立していた。フェミニズムな同僚たちの天敵だ。
 黒いサングラスしてキーボード叩いてる。

 だから彼女は味方が欲しかった。それはそれで健気で、切ない。でも好みじゃないんだよなあ。

 彼女の担当ページは絶対に私でないとダメというお約束。痛し痒し。

 景気の良い頃だったので、撮影と称して箱根の高級リゾートホテル一泊とか。
 外部スタッフも一緒なので、別に変なことにはなったりしませんが、微妙。

 ほろりほろりと身の上話も聞かされます。

 それ以前に、既に聞いていた。彼女の悲しい身の上。

 「馬太郎さん、知ってましたか、浅川さんの20代の頃のウエストは56ですって!」

 なんと、まあ。その身長から56センチとは。
 今と違って彼女の数年前は理想的なプロポーション。また、それを自慢にしてた。

 「馬太郎さん、知ってます? 聖ドミニカ事件」

 聖ドミニカとは、山の手線内側にある教会で有名な結婚式場でもあります。

 私は知らなかったのですが、この御注進者の彼が説明するに、

 数年前、ここで大事故があった。週刊誌でも大きく取り上げられたそうです。

 結婚式を終えた幸せな新郎新婦がオープンカーに乗って、双方の縁者の見送りを受けて、いざ成田へ。

 その時、車が暴走。その参列者の中に突っ込んでの大惨事。

 死傷者多数。新郎新婦も重症を負って、都内の緊急病院へ。運転手は死亡だったとか。

 成田離婚 以前の話で、破談。

 その時の傷の後遺症と薬のせいで、ホルモンのバランスが崩れて、ウエストも崩れてしまった。と


 私からはその事故の件には決してふれませんでしたが、
 彼女からは、交通事故の後遺症で体がつらいとは聞かされました。

 仕事を離れたときの彼女はとても素直な女性でもあった。
 飲んだ帰りに、途中までタクシーに同乗しての帰宅。
 国道246号線を疾走する車中で二人は車窓を見つめている。
 彼女の手が私の手に触れて、重なる。私はそのまま外を見つめていました。
 オレンジと緑の光に照らされた沈黙。


 浅川さんの退職が決まった。

 結局、彼女は一年も保たずにその職場を後にします。肌に合わないとこぼしていました。

 退職の日。たまたま打ち合わせで訪れたその職場で、遠目から彼女の痛い視線を感じた。

 ヒョウ柄の上下のミニスカートだった(涙)。ラムちゃんのような(汗)

 職場の送別会の二次会はオカマバーだったそうです。私は行きません。部外者ですから。

 そこのオカマたちにこき下ろされていたそうです。

 オカマにも嫌われるタイプ。嫌なタイプの女。

 いつも御注進してくれる彼から聞いた。「あれはちょっと可哀想でしたよ」と。

 サービス業の彼ら(彼女ら?)は瞬時に客筋の意向を察したということでしょうか。酷いね。

 そのちょっと前、退職のことを明かされたとき、
 両親の持ちビルが都内のJR駅前にあるので、そこを改装して貸しスタジオにするのだと言ってました。
 そのために、プロデューサーの修行をするんだと。

 そういって、彼女はアメリカに旅立ちました。
 

 それから、5年後、、、。 ちょっと長くなってしまいました。続きはまた次回。