その美徳は誰のため?
Kちゃんは私に似てとてもシャイで、
まあ、成長の証なのでしょうか、最近は母親と一緒に歩きたがらない。
夜だったらいいよ。といって、
夜道では寄り添って手をつないでくるそうです。なんともはや(笑)。
昨夜、風呂場のお馬の親子談義。
「しかし、その恥ずかしがり屋もなんとかしないとね」
「うん」
「でもね、それって、日本人のひとつの特徴なんだ。みんなそう」
「みんな?」
「そうだよ。日本には『恥の文化』っていうのがあるからね。
目立ったり、人と違うこととかするのを嫌がるんだ。」
「そうなんだ」
「でもね、その内に変わるよ。
たとえば、Kちゃんが恥ずかしいと思ったりするのは
自分の事、自分のため、だから恥ずかしがるんだよ」
「そうなの?」
「たとえば、パパとかママにはなんでもかんで頂戴頂戴って海鳥さんでしょ。
それ、他の人に言える? 遠慮しちゃうよね。そういうのは親だったらできる。
でもさ、その頂戴っていうものが自分の為じゃなくて、
困ってる人のためならきっと恥ずかしくなく、言えると思うよ」
「そうかな」
「そうだよ。自分のためじゃなくて、世のため人のためとかね。
そういうのを『志』といいます。
はやく持ってね。『志』。
そしたら、恥ずかしくなくなるよ。」
「はい」
大山巌は後年、己を空しくする訓練をしたといわれます。
日露戦争の勇者。
児玉源太郎、山本権兵衛、秋山好古・真之には
この「恥」がありませんでした。
「志」があったからです。ロシアに勝つための。という志が。
太平洋戦争開戦前夜。
日本の暗号は、「マジック」というシステムで米軍にほぼ解読されていた。
参謀の石井秋穂(陸軍省軍務局軍務課から南方軍政務参謀だった情報畑の軍人)。
彼は米国から届く電報を毎日見て、「暗号電報が盗まれている」と直感した。
それを、外務省に注意しようと電話を取ったが、
越権行為になると躊躇ってやめてしまった。
戦後、そのことを非常に後悔したそうですが、ダメだね。
良識派の限界がここにもあります。志が足りなかった。
美徳も考え物なのです。