漢と漢の邂逅 テロルとの決別
さて、頭山満と出会った杉山は急速に彼に引き寄せられていきます。
頭山と杉山は今後実行すべき事業を確認しあいます。その盟約とは、
暴力的方法論で政府に対抗するのではなく、九州をまとめ、
この地方の発展を第一とする。
というものです。
これより、杉山は頭山の経済的な軍師という存在になる。
そして、もう一人の頭山の股肱の臣で杉山同様に玄洋社の実業部長と言われた
結城虎五郎と共に、三人で
「今後、一切のテロ活動を封印する」誓いのもとに、
左手中指の第二関節から切断した。
やくざの指詰めではない。武士の誓いだ。
上の写真がその頃の明治19年の三人の写真。
この写真だと分かりづらいでしょうが、確かに三人の中指はありません。
左から結城虎五郎(27歳)、頭山満(32歳)、杉山茂丸(23歳)。
馬太郎シスターズよ、こんな若者って素敵だと思わないか。
そして時々ブラザーたちよ、眩しくないか。
杉山は死後、その希望で東京大学医学部に献体された。
今でも、彼の躯は標本室にある。すの欠けた中指が何よりもの証明だ。
杉山茂丸を児玉源太郎、伊藤博文、原敬などの暗殺の黒幕などと
邪推する愚かな識者の見識を疑います。いや嘆く。
杉山と頭山はまったくタイプは違います。また、立場を異にすることもありました。が、
その関係は半世紀を数え、杉山の死去で一応のピリオドが打たれます。
終生続いたのだ。
杉山の葬儀を夢野久作の言葉をかりれば
「駅前まで見送りに来た頭山満先生が、父の遺骨を安置した車の前に立ちながら、
見栄も何も構わずに涙をダラダラ流して居られるのを見た時に、
私は顔を上げ得なかった。」
「頭山さんが頭山さんが」と云って、今年六十七になる母親が、
国府津駅付近まで泣き止まらなかったのには全く閉口した。
言葉が無かった。
夢野久作『近世怪人伝』より抜粋
漢と漢の邂逅がここにあります。
杉山茂丸伝(3)杉山の友だち●頭山満[とうやまみつる](後編)