あかんたれブルース

継続はチカラかな

愛をお金に換算できるか

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お金の話(3)有島武郎



二人の死体が発見されえたのは心中からおおよそ一ヶ月の後だった。

二人は女の赤いしごきで結びあわされていたが
男が遺書に書いてあった通り、腐乱して白いウジが這いまわっていた。

男は作家の有島武郎白樺派の中心人物である。

女は「婦人公論」の敏腕編集者、波多野秋子。
その美貌は、彼女に依頼されるとどんな作家でも締め切りを守ったという。


おはようございます。
朝っぱらからグロなのかラブなのかメロなのか
よくわからない枕になってしまいました。

有島武郎と波多野秋子の心中事件は
人気作家と美人編集者という組合せで
当時は大変ショッキングな話題だったようです。
波多野秋子には夫がいました。

有島もなかなかのナイスミドルでしたからね。
そして白樺派
上流階級の子弟による文学。私も勧誘されたものです(笑)。
そしてクリスチャン。
キリスト教では自殺は禁じられております。
かつての信仰上の師、あの内村鑑三は激怒したようです。


波多野秋子は胸を病んでいた。

「秋子は死にたがっている。私も実はその望みがあった。
 死にたい男と女がめぐり逢って恋愛したのだ。とめないでくれ」

友人に語った有島の言葉です。

彼をお坊ちゃまとするか純粋な心を持つ紳士とするか
少なくとも「ちょい悪オヤジ」なんかじゃないことは確かですよね。

心中の先日
有島は秋子の夫に脅迫されていました。
「それほどお前の気に入った女なら進呈しよう。
 しかし、代償がいる。しかも一度ではない。
 お前を一生苦しめるために、これからも何度ももらうが、
 とりあえずいま一万円よこせ」

この波多野春房という花王奥様劇場に登場しそうな男のセリフに
有島は毅然と拒絶した。

「愛する女性を金に換算は出来ない。断る」

さあ、有島武郎は世間知らずか?
当時は「姦通罪」というものが存在していました。


その翌日の話つまり心中決行の前日。
ギロチン社という過激なテロ組織がありまして、
まあ無政府主義者の集まりです。
そこの河合康左右という男に二千円を要求されます。
強請のような感じで・・・

有島は淡々とそれに応じたそうです。
すでに死を覚悟していたのでしょうかね。


めぐまれないものも愛を渇望するが
めぐまれたものは愛を研ぎ澄ませ狂気にしてしまうのか

ひとつ言える確実なことは
愛をお金に換算することはできない。


有島の遺書にはこう書かれていました。

「 ・・・雨がひどく降っている。

  私達は濡れそぼちながら最後のいとなみをしている。

  森厳だとか悲壮だとか、いえばいえる光景だが、

  実際、私達はたわむれつつあるふたりの小児にひとしい。

  愛の前に死がかくばかり無力なものだとは、

  この瞬間まで思わなかった。

  恐らく私たちの死体は腐乱して発見されるだろう 」