あかんたれブルース

継続はチカラかな

極道文学『花と龍』は実話ノンフィクション

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私は密かに「極道文学」と命名しているのですが、
青春の門』のなかに、
『花と龍』と『人生劇場』そしてときどき『無法松の一生』を感じた。
これらはみんな「極道文学」に入ります。私的には〜あ。


『花と龍』は何度も映画化されています。

作者は火野葦平。れっきとした芥川賞作家。
この作品は読売新聞の連載小説として昭和27年から約1年掲載されたそうです。

主人公の玉井金五郎(若松の仲士・玉井組組長)は火野葦平の実の父親。
そうなると当然、妻・マンは彼の母親となります。

すべて実名(汗)。

玉井金五郎が刺客に襲われて30箇所をメッタ斬りにされて
病院でミイラのような包帯グルグル巻きが印象的ですが、
あの犯人は「吉田磯吉の四天王と呼ばれた岡部亭蔵の一派」っていうから泣かせます(笑)。

吉田磯吉はこのブログのヒーロー杉山の舎弟にあたる人物ですね。
因みに吉田を主人公にした作品は東映『日本大侠客』と大映玄海遊侠伝 破れかぶれ』

いずれも舞台は北九州。背景には石炭があります。


   洞海湾の風景は、関門海峡とは、また趣を異にしている。
   瓢箪形の巨大な入り海は、戸畑、八幡、若松、という三つの町に取りかこまれて、
   中島、葛島という二つの島を浮かべている。

         これが『花と龍』のイントロです。対する『青春の門』は

   香春岳は異様な山である。
   決して、高い山ではないが、そのあたえる印象が異様なのだ。
   福岡県から国道二百一号線を車ではしり、矢木沢峠を越えて飯塚市を抜け、
   さらに烏尾峠とよばれる峠道をくだりかかると、
   不意に奇怪な山の姿が左手にぬっとあらわれる。


こんな感じ、こんな出だしです。
私は別に五木寛之が『花と龍』をぱくったなんて
ケチなことを云ってるんじゃありませんよ。
作家にとって時代と生まれ育った環境風土は大きく影響するんだなあ。と

東映がそれまで時代劇映画に行き詰まりに陥って「仁侠」路線に奔ります。
そのなかで『花と龍』は貴重な原作、脚本のネタとなります。
しかし当初、こういった「やくざモノ」はゲテモノ扱いをされて
批評家や映画関係者から総スカン。だった。

その影響もあって中村錦之介は主役を降りて、
鶴田浩二高倉健などのスターが生まれていきます。

ウィキペディアの『花と龍』の解説に面白い記述がありました。
「裏切りやすれ違いを経験しながら家族の歴史を積み重ねていく大河小説」
「タイトルの「竜」は金五郎が青年の客気で五体に入れた文身であり男としての虚栄心と
詰まらない意地が人生に拭えない影を落とすという自戒の徴であり、
ひたむきに信念を貫く金五郎とそれを支えつづけるマンは戦後に全てを失った
日本において裏切りや屈辱の境遇にあっても人としての品位を守ろうとする
玉井自身の理想を「花」としたものである。
やや通俗的であるが米国の占領から独立する日本への火野の願いを物語っている。」


歌は世に連れ、映画や小説も世に連れ、徒然ですかね。

「裏切りやすれ違い(誤解)」

いつの時代にもこういった「苦さ」はあったのですね。