あかんたれブルース

継続はチカラかな

織江の後ろ姿




五木寛之は、織江を
アウトレットな女に仕立てるために、
「少し足をひきずるような」
「女」にしました。

織江はそういう女として生まれて成長します。

主人公はうすらポカ〜ンなので、その変容を知らずに再会する。

決して、恵まれた環境ではなく
哀しみや淋しさを受け止めて生きている女性。

こら信介。女(梓)先生などにうつつを抜かさずに、しっかり織江を守らんかい!

「のぼり蜘蛛の重」と謂われた、亡き父・伊吹重蔵にかわって
ヤキモキした読者が全国に7万8千人。当社調査結果


織江は色の白い、動作のゆっくりした女の子だったそうです。



なで肩で首の細が細い。

いつも少し伏し目がちで、無口な娘。

うすい一重瞼の下に、翳りをおとしたように下がり気味のまつげがかぶさって、

よくその毛の先が目のなかに刺さって

黙って涙を流していた。

織江はかすかに左足をひきずって歩いていました。

さして目立つほどではないが、歩いている姿を背後から見ると、

肩が揺れるので足が不自由なことがわかる。

近所の子供たちは、織江が通りかかると、大声ではやしたてて、
残酷な替え歌を合唱するのだった。

興奮して織江のまわりを子供たちが踊り狂う。
その輪の外にぽつんとたたずんでいた信介。

信介は織江が泣くのを見るのが好きではありませんでした。

けれども、

彼には中町が幼いいけにえをかこんで乱舞するなかに入って
正面から制止する勇気はなく、
いつも無抵抗な織江をからかうのに飽きた子供たちが立ち去ったあと
のこのこと彼女のところに戻って来て、

「はよ立たんか」と、

あたりをうかがいながら、織江を叱るような口調で言う。

「めそめそ泣きよると、またやられるぞ。
 ほら、連れていってやるけ、はよ帰らんかい」


かすかに左足を引きずって歩く織江と並んで歩くと、
信介は何かやわらかなもので体の内側を優しくなでられる気がした。

ときどき手の甲で目をこすりながら、織江は信頼しきって彼のあとをついてくる。

すれちがう大人たちのなかには、二人を露骨な言葉でからかう者もいた。

その年頃の男の子にとって、それはある意味「勇気」のいる行為だった。


「伊吹の兄ちゃん」

織江は信介のことを、そう呼んでいた。そうです。