こんな二枚目スターの話
私の事じゃない(笑)。
戦時中の話。
滋賀の八日市の第八航空教育教育隊に、一匹の古参兵がおりました。
階級は上等兵。来年の四月には満期を迎えるというこの男。
乱暴な口調とは別に繊細で優しい好漢でした。
精神主義という軍隊。
規律という名の下に、上下関係での暴力制裁は日常茶飯事。
こういうのを愚か者の絶好の隠れ蓑とも申します。
天皇陛下の名を借りて。
今日も初年兵が敬礼を忘れたとかで往復ビンタのあとでネチネチとやられている。
「やい、いい加減にしろ!」
なかに突然入って、加害者の下士官に喰ってかかる男が彼だ。
「何だ、貴様は上等兵じゃないか!」
「おう、それがどうした。こんなもの関係ねえ」と襟の階級章をビリビリ破り捨てる。
弱い者いじめをする奴なんて許せない。
たといえ、軍隊であろうが、やるんなら一対一でやろうぜ。
野良犬のような目、野武士を叩き切るような面構え。
この男、どこかで見たような。。。
そう、若き三船敏郎です。
タジタジになった下士官は「もういい」とその場を後にします。
こういった話って実はよくあるんですよ。
営倉とか軍法会議とか恐くない連中もいたんです。
そう勝新太郎の『兵隊やくざ』を地でいくやつね(笑)。
今度、慰安所まえで士官をぶん殴っていた士官の話もお伝えします。
6年間軍隊にいて、階級は上等兵どまり。
この硬骨漢の
終戦のときの感想は
「ざまあみろ」だったとか(笑)
彼は除隊して東宝に入社するのですけどね。
「あんな不良を使っていいんですか?」という声もあったそうですよ(汗)。
スクリーンの菊千代(『七人の侍』)を彷彿させるエピソードです。
「おれは可哀想なやつが大嫌いだ」確か菊千代はそう言っていました。
いや?赤ひげだったかな?
確かめてください。
今日からまたBS2で黒澤作品をオンエアーするぞ。
『隠し砦の三悪人』での馬上の勇姿(スタントなし)
『赤ひげ』での魂の絶唱(泣ける)
『七人の侍』での・・・
菊千代! 見参。
晩年は離婚問題で奇行がワイドショーで騒がれたけれど、
三船敏郎は映画のキャラと現実像が一体化していたんですね。
裏表のない人間だった。わけだ。