あかんたれブルース

継続はチカラかな

機密情報漏洩「亀号」事件





日露戦争が近づいている。

明治三十四年。
外国勤務を解かれた真之は常備艦隊参謀に補され、海軍少佐にすすんだ。

「戦争がはじまれば」
と、真之は母・お貞につぶやいた。

海軍参謀・某少佐、軍事機密を漏洩す。
その翌日、「東京スポーツ」の一面のトップで報道した。なんちゃって(笑)。

なんちゃってじゃないマジな話。余談だけどさ

秋山真之はこの情報を他にも一人漏らしていた。

「戦争が近いぞな、儲けたければ借金してでも、船を買うぞなもし」

時は明治三十六年。場所は料亭。
相手は同郷の山下亀三郎

亀三郎はこの情報を信じた。そして、買った。
英国船ベンベニニー号(2373トン)。定価は12万円
手元に用意できた金は1万円。あとの11万円は借金した。
保険会社や取引先から8万円の借金はできたが、どうしても後3万円足りない。
この亀三郎の息を感じ、信じた男がいた。
第一銀行横浜支店長心得の石井健吾は自ら3万円の謝金をして
亀三郎に貸した。

こうして手に入れた船に亀三郎は故郷伊予国宇和郡喜佐方村河内(現・愛媛県宇和島市吉田町)から
「喜佐方丸」と命名する。

船は買ったけれど、まったく経験も資金のない新米船主は燃料代に困った。

その年の暮れ、徳富蘇峰の口利きで「喜佐方丸」は政府から御用船の指定を受ける。

亀三郎は「御用船指定」の意味を考えた。
日露戦争間もなし」という確信は鉄板となって、石炭を買った。

年明けの二月六日。日露戦争は火蓋を切ったのである。

この二年間の戦争で山下亀三郎は150万円の大儲け。


情報がいかに大切か。それは軍事だけの話じゃありません。
亀三郎はズルか?
あなたがもし亀三郎だったら、真之の情報から莫大な借金してまで
船を買えた?




坂の上の雲』文庫第三巻 第二〇章「風雲」
に変更。連合艦隊参謀就任の件と絡めてね。

山下亀三郎。後の山下汽船(現在の商船三井)、山下財閥の創始者
通称、「泥亀」。
宴会の幇間、達人として、また
福沢桃介、松永安左ヱ門とのコンビは抱腹絶倒のピカレスク野郎です。
以前、紹介しましたっけね(笑)。
面白いよおお、この人。