その親爺さんが蒸発してしまった。
小学6年生のKちゃんは
実家からの電話で家族の動揺を知ると、
母親に内緒で阪急沿線の北区中津に向かいます。
Kちゃんは父親の隠遁先を知っていたのです。
「お母さんに内緒にしておいてくれ給え」
その彼女と毎日マッチを擦って、暢気なことを・・・惚気ていました。
その愛人宅は狭ッ苦しい裏町のトタン屋根の続いた奥にある一軒屋でした。
Kちゃんが裏口の窓から中をのぞくと
鼻歌まじりの親爺さんに
浴衣姿の洗い髪の女性が芋を蒸かし運んでくると、
ぴったりと寄り添って親爺さんのクチに芋を、は~い。
もぐっ。
まるで介護老人のようだ。
もっと。もぐっ。もぐっもぐっもぐっもぐっ
く、苦しい・・・
親爺さんは、彼女を見つめて顔をほころばせ
「お前もぐもぐ、最近もぐっ、すこし太ったもぐ」なんて、
ふたりできゃっきゃいって・・・
もう見ていられない。
親爺さんは彼女のお尻に顔面を押しあてます。
なにしてんのん? 女性の甘ったるい声。
「お前のもぐっもぐっ、オナラもぐ、全部嗅ぎたいもぐっ」
いややん~ 変態~
「愛しているから全部嗅ぎたいもぐもぐっ、これが愛の証もぐっ」
ぷっすーーーっ
くっ臭さーーーあ!
中略
それから親爺さんは寝たきりになってしまった。
そして、もう一度、あいつの屁が嗅ぎたいと
うわごとのようにいった。
Kちゃんは胸が痛みました。
もう一度、彼女のオナラを嗅がせてあげたかった。
それくらいの労をどうしてとってやれなかったのか
Kチャンは、胸がこみあげて来た。もぐっ
幻覚舎アウトセーフよよいのよい文庫 馬太郎『仁丹』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%AA%E3%82%89
お尻が割れているのは顔面を密着させるためさ。へっへっ屁