あかんたれブルース

継続はチカラかな

やさしい狼たち

団先生の『牡丹』に「牛丼屋にて」という作品が11番目にある。

先生も吉野家のカウンターでちびりちびり御銚子三本を飲むのが
最近のお気に入りだそうです。

死んだ中島らものことを想い出した。

彼の自伝的な作品
『今夜、すべてのバーで』には
牛丼家のカウンターで、紅生姜をつまみながらコップ酒を飲む、
中島らもがいた。

彼はアル中だった。

その豊かで繊細な感性は、酒を必要としたようです。


団先生もアル中なのでしょう。
でも、それは健全な、という前置きをつけると問題かもしれないけれど、
牛皿の並とおしんこを注文するところが、
団先生らしい。
慢性腎不全で闘病中の先生は人工透析を拒絶されている。
腹上死での大往生が念頭にあるようです(笑)。

団先生らしい。


中島らも 好きだったなあ。

野坂昭如が「なぜ中島らも直木賞を与えない!」と憤慨しておった。

最後のアウトロー作家。
というには、やさしすぎる中島らも

最後の変態小説家。
というには、やさしすぎる団鬼六

吉野家のカウンターにはやさしさがあるのだろうか。
やさしい人を引き寄せるものがあるのだろうか。

今夜、ふらりと訪ねてみましょうかね。

黒いサングラスでボサボサ髪のしゃくれた顎の男が
カウンターで背中をまるめているかもしれない。

今夜すべてのバー吉野家
静かに
コップを傾ける
死んでいったやさしい男と
死んでいくやさしい男に

乾杯、モンテカルロ




幻覚舎アウトセーフよよいのよい文庫 馬太郎『仁丹』より「庄野真代
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