あかんたれブルース

継続はチカラかな

性急に奔ってはいけない。

しきちゃんへの伝言(5)


二.二六事件で殺害された政府(軍)要人に
教育総監渡辺錠太郎がいます。

彼は皇道派ではない。良識派の高級軍人だった。そのあらわれが
天皇機関説教育総監という立場で擁護する発言をしたことでも立証できる。
そして、それが彼を暗殺のターゲットとする理由となります。

日露戦争以降、児玉源太郎の急逝以降、軍部にしっかりしたリーダーが
いなくなったとこれまで書いてきました。
それは軍部の官僚化であり、混乱であり、下克上につながっていきます。
統帥権も一人歩きしてしまう。

それまでの高級軍人はこの統帥権というものを
非常にデリケートに扱っていたのです。
それが一人歩きしていく。これが恐いのです。

無論、良識派の軍人、役人、民間人もいました。しかし無力化していきます。
軍部の圧力? いえ、そんな簡単なものじゃない。
「雰囲気」です。

たとえば、日本の近現代史のスタート地点を明治維新とすれば、
それは最初から「矛盾」に満ちたものでした。
私たちは歴史を考えるうえで、現代の自分(環境)と比較します。が、
そこには「当時の時代環境を把握した上で」というファクターを抜かすと
大きな誤解が生まれるものです。

そういった現実、矛盾に直面してみると、閉塞感に陥ってしまう。
これは現代の日本の問題でも同じです。
要は、煩わしいのだ。だから一気に解決できる特効薬をウルトラCを求める。
性急すぎるのです。
それぞれに正義がありますから、正義と正義、危機感と危機感でもって
衝突する。

これは今でも同じです。

二.二六事件の背景には皇道派と統制派の対立があるといわれている。
結果として、統制派が権力を掌握し、日本はさらなる暴走を加速させ
大失敗を犯すのです。

それを誰も止められない。天皇陛下でさえも、それは止められない。

昭和天皇には大きなコンプレックスがあった。
それは自身が大正天皇の実子ではないということです。
昭和天皇と三人の親王には三人の父親が存在し、それぞれが異父兄弟の関係でした。


万世一系の定義が成り立たない。


二.二六事件にもそれは関係していた。
次弟の秩父宮をたてるクーデターだったいう側面があった。
秩父宮は自ら天皇になって天皇「制」を廃止しようとしていた。
それができるのは皇族である自分が天皇となって実行するしかない。
日本を大統領制にするつもりだったようです。

しかし、クーデターは失敗します。

首謀将校の一人、安藤輝三大尉が処刑前の最期に「天皇陛下万歳」ではなく
秩父宮殿下万歳」と叫んだのはそういう理由です。

対して、昭和天皇は必死に、天皇であろうとした。
わたしが自決云々の記事で、昭和天皇が自決できなかった理由のひとつです。


人間は、どこかで誰かのせいにしてしまいがちです。
でなければ必要以上に自分を苛むか。

自虐史観というなかにも、それはある。

性急すぎる。それは煩わしいからだ。

そういったなかに「陰謀説」の論者もいます。
米国の陰謀、ユダヤの陰謀、フリーメイソンの陰謀、闇の権力者の陰謀・・・
しかし、これも正しくない。
陰謀はある。
あるけれども、それは私たちが把握するそれとは異質で別次元のものです。

この点を見失うと、
また65年前の、それ以前の
悲劇が生まれる。