あかんたれブルース

継続はチカラかな

正論・正義の獰猛性

しきちゃんへの伝言(9)


この「二六新報」の論説が国会で取り上げられて大問題となる。
秋山定輔は国会(衆議院)議員でもあった。
その責任を追及されて議員辞職に(結果的に)追い込まれてしまいますが、
と同時に「露探疑惑」をかけられる。

「露探」とはロシアのスパイという意味の造語です。

仕掛け人の男がいました。権藤震二という。

この男、実は、元「二六新報」の記者だった。その敏腕が悪徳となり
同社をクビになっていた。それを逆恨みしてのものだった。
さらに、権藤は警視庁まわりから警視総監大浦兼武との接点もあったといわれる。

最初にターゲットにされたのは劇作家の長田秋濤です。
そして、秋山定輔へと・・・結果は二人とも冤罪なのですが、
長田は作家生命を絶たれるというか名誉を失墜し、秋山は議員辞職
まあ、日米密約暴露の毎日新聞のようなものです。

この二人には共通点がある。それは伊藤博文と親しいことでした。
三人は日露戦争に反対していた。
伊藤だって、元老でなければ露探にされていたかもしれません。
薩摩の上村彦之丞提督でさえ、露探にされた。投石されていた。
戦死して、軍神に祀られなければ広瀬武夫だって危ない。

全国で露探騒ぎが大ブレークです。まるで魔女狩り
死傷者死人も出る。自殺者も出る。

この権藤震二、悪い奴で、後にシーメンス事件でも登場しますが
電報通信社の立ち上げに参加している。
いわゆる「電通」の創業者のひとりです。

戦争とマスコミ。とは別に、戦争と広告代理店。
これは、現在でも問題になっていますが、
日本のルーツはこの権藤震二で間違いない。

ま、権藤はいいのです。根が悪徳ですから。

問題は、秋山定輔
ジャーナリスト魂を貫き、正論正義を訴え、そして冤罪をきせられた。
となるでしょう。しかしだ、秋山に打算はなかったのか? 

黒岩涙香変節漢で悪玉。秋山が正義正論を貫いた善玉。とはならない。
秋山にもポピュリズムがあり、経営者としての戦略があったことは否めない。
そのための樺太開拓キャンペーンなど勇み足報道や誤報などで
「二六新報」の信頼は失われていったともいえる。

その秋山を攻撃したのは同業者の他社報道機関だった。

報道とはなにか? ジャーナリズムとはなにか?

そして、講和条約締結に反対し、戦争続行を訴え
民衆は暴徒と化して凶器となる。
民権家が、学者が、マスコミが挑発するのだ。


秋山定輔高橋是清に対する、政府に対する、批判は間違っている。
国会議員としても、報道人としても、間違っている。
それが正論でも間違っている。
それが事実であっても間違っている。

ペンは剣よりも強いかもしれない。
言論報道の自由も守らなければいけない。
しかし、忘れてはならないこと
ジャーナリズムとは、報道とは、商業ビジネスで成り立っていることを。

それを操っているのは、実は
購読者・視聴者という民衆であるということを
忘れてはいけません。