あかんたれブルース

継続はチカラかな

海辺の丘の遠い花火

己を空しくさせる(据え膳)


こんな話がはたして己を空しくするに関係するのか
たいへん疑問なのですが、


先月、ジブリ祭りとかで二本立てをやっていました。
そのうちの一本が『海がきこえる』だったった。

むかし観たんですが、すっかり忘れていました。
原作は氷室冴子

なんというか青葉茂れるというか
こういった方言が入った地方の青春物っていうのは

胸がうずく

わたしのうずきはの原因は

1)主人公と親友の松野の知性
(自分は高校時代にこんなに賢くなかったもんね)

2)主人公とヒロイン里伽子の東京旅行
(参りましたしてね(汗))

3)卒業して最初の夏の同窓会で清水明子が漏らした
「あの頃は私たちの世界が狭かった」の台詞
(そうなんだよなあ・・・しかし清水明子はいい女だった)

ま、青春ってやつです。若き日の遠い花火さ


いろいろ書きたい気持ちはあるんですが、
己を空しくして(2)に絞ります。
かいつまんでお話すると
親の離婚で高知に転校してきた武藤里伽子は
夏休みに東京の父親に会いにいく。母親には内緒さ
唯一の友人小浜祐美を誘ってコンサートに行くと偽って
ところが土壇場で小浜が腰が引けて主人公に助けをもとめます。
電話で呼び出された主人公はどうしたものか
小浜のかわりに一緒に東京に行くことになりました。
里伽子は父親が暮らすなつかしの我が家へ
そこには新しい「女」がいた。

主人子は取りあえず、新宿のホテルを紹介されて
そこでひとり・・・(俺なにしにきたんだろう、と思うよな)
そこに里伽子が現れて、今夜はここに泊まるという。

まったくもって危険な夏休みじゃ!
里伽子は美少女だ! 
どうする主人公!


結局、
彼は風呂場で寝た。
そんだけの話なのですが、そんだけのつまらんエピソードに
わたしの脳味噌は提灯のように膨らんで走馬灯・・・

据え膳喰わなば男の恥という言葉がある。
そういう考えが常識なんだと言い聞かされた。
これに翻弄されたものです。

でもさ。正直なところなかなか食えないんだよね。
度胸がなくてビビッた時もあった。
出された膳が苦手なナマコとかナタデココだったとか
腐ってたたとか・・・そういうのもあった。

いや、なんというか気が引けたよね。


損得の話で、元を取れなんていうのも震度5強です。
里伽子の旅費は主人公が立て替えたものです。
ま、貸したから返ってくるでしょうが
主人公の旅費は自腹だ。
別になんの意味もない東京行きに7、8万も使うかあ?
こんなことをうっかり先輩に漏らした馬鹿にされるよね。
馬鹿か、って。

なんというか、主人公はボケというかとっぽい
それでも良い意味での茫洋さがある。
これがなかなか良い味わいなのです。

わたしはもう52歳だし、こういう人ですから
やったやらないとか、それが男女間の損得とは考えない。
たださ、若い頃に「据え膳」云々とかの鉄則とに囁かれて
往生したことは事実だ。
また、損得じゃないといいながらも、なんでこんなことやってるのか?
と考えるときだってまだ、すこしあります。

若い頃はそういった本能や煩悩から逃れたくて
はやく歳をとらないかあと思ったものです。
いえ、それは清廉な人間になりたいわけじゃなくて
大人の恋愛ができる大人になりたかったスケベ心であって
わたしにとって「若さ」は邪魔だったんだ。
それを女友達に告白したら
「健全な男性としての成長」とほめられた。
うれしかったですよ。

でね、この『海がきこえる』を観て
そういうのは若さだけの問題ではなく
たとえばこの主人公にある資質とか知性とか
感性でもあるんだろうなあと思ったわけだ。

訓練以前のわたしたちがすでにもちえているものだ。


そういうのを大切にしていたいものです。