あかんたれブルース

継続はチカラかな

くらげにしびれてビビビビ、ピッ



1970年製作の大映映画に『しびれくらげ』という
JJ.が喜びそうなタイトルの作品があります。

日活ロマンポルノ路線(71年より)に先駆けて
渥美マリ主演の軟体動物シリーズ
(動物科学ドキュメンタリーじゃないよ(汗))
前年の『いぞぎんちゃく』のヒットから
この年に

2月に『続・いそぎんちゃく』
5月に『でんきくらげ』
7月に『夜のいそぎんちゃく』
8月に『でんきくらげ・可愛い悪魔』
そして『しびれくらげ』と一年で5本と量産された
ピンク映画なのですが・・・

この『しびれくらげ』の監督は増村保造という
日本映画の監督としてはまあまあ名の通った人です。
かといって、これらの作品が、はたまた
増村保造の『しびれくらげ』が芸術性の高いもの、
というわけではなく
なんというか無茶苦茶なピンク映画であることは
間違いない。

ホントB級というに相応しいもので、
大映テレビ製作の『赤いシリーズ』や『スチュワーデス物語』を
知っている人だったら、ああ、あのノリね(汗)。という感じの
そういったチープなものです。カルトかな?

でもね、共演陣が
西村晃とか
(何代目かの水戸黄門。黒澤作品によく出る名優の一人)
田村亮とか
阪東妻三郎の息子で、田村高廣田村正和の弟)
津川祐介などが出演していて非常に味わい深い。
脚本は破綻してるのですが、なんだろうこのリアリティー
どうもこういった役者の力も大きいようです。
いや、破綻しているハチャメチャのシナリオの台詞に
凄みがあるのかもしれません。

なかでも、この作品のダメ親父役の玉川良一は圧巻!
(往年のコメディアンで毒蝮三太夫名古屋章と鳳啓介を足して
 3で割ったような浅草の臭いのする役者)

金にだらしなく、娘を食い物にするどうしようもない男だ。
ヒロインの渥美マリはなんとかこの親父から
逃げようとするのですが、なかなかうまくいかない。

で、そのわけは、結局血のつながりなのでしょうかねえ。
嫌っていてもどうしようもないところがある。

で、その娘の台詞が凄い

「親父は殺せても、捨てられない」


がっちょーん!


こんな三流映画なのに、この台詞はなんだ!
黒澤だって笠原和夫だって唸ると思いますよ。

殺すことはできても
捨てることはできない。

深いなあ・・・


大丈夫、映画はそんなドロドロ仕上がっていません。
ヒロインの渥美マリがそんな不幸な運命を蹴っ飛ばしてくれる。
そして、玉川良一の名演がそれを決定付けてくれます。
それになんたって大映ですからね(笑)

わたしが、いまの時代に
たとえそれがフィクションであっても
ノンフィクションであっても
リアル世界であってもネットのバーチャル世界であっても
いまひとつリアリティーを感じない
釈然としない引っかかりがあるのは、この深さがないからだ。
それは大映のピンク映画にも劣るほど
薄っぺらいんだよね。

70年代から2011年に、
時代の感性は確かに変容している。