あかんたれブルース

継続はチカラかな

東北正面にこだわった理由

ドラマ『坂の上の雲』第三部によせて(3)


ドラマ『坂の上の雲』の旅順要塞攻略
屍の山累々と大地を血で染める不毛な肉弾戦でありますが

なぜ、第三軍は、西方攻撃ではなく東北正面攻撃にこだわったか?

前者は手薄ですが迂回するので時間がかかる。
後者は強固ですが最短距離なので成功すれば時間がはやい。
伊地知参謀長は早期解決を目論見ました。
それ自体は正しい。

では、その成功とはなにか?

陸軍にもともと旅順を攻める計画はなかった。
これは海軍の要請で急遽もちあがった作戦です。
その海軍の要望は旅順港内に潜むロシア艦隊を砲撃で
殲滅するか、港外にいぶりだしてほしいだった。

なにも要塞本体を攻略して旅順を占領して欲しいとは頼んでいない。
けれども、陸軍・第三軍はそれを目的とした。
「海軍の指図は受けない」と頑なです。

なぜか?

要は金です。

戦争は軍人の稼ぎ時なのだ。
平和なときの軍人は暇で肩身が狭い。
戦争における戦果は絶好の論功行賞にあずかれる場なのだ。
勲章、(特進)昇進、で給料、恩給がアップします。
爵位だって手に入れられる。

また、軍隊を動かすというのはとても金がかかる。
日露戦争の前の北清事変で一個師団程度動かしたのに
¥4260万円(現在の3408億円)也。
旅順攻略は本格的戦闘ですから少なく見積もっても
一個師団で¥5000万円はかかるとして
第三軍は三個師団に二個旅団ですから¥2億円(一兆2000億円)
あとでもう一個師団加わってくるし、半年以上かかりましたから
現在の価格で¥2兆円はくだらない。

とにかく戦争は金がかかる。

なもので、それに見合った費用対効果というか
戦果が必要だと考えられた。
それもあって、二〇三高地攻略で「はい終わり」にはできなかった
と考えてもいいでしょう。えっ、不合理だって?
戦争自体が不条理なものですからねえ(汗)

ま、伊地知参謀長もここまで難航するとは
思わなかったわけです。三日で解決できると。
日清戦争では一日で陥落できたのだからと。

しかし、その日清戦争でも迂回の西方からのものです。
だから、陸軍でも西方とか二〇三高地意見を支持したわけです。
でも、伊地知は聞き入れなかった。

なぜか?

引っ込みがつかなくなったのと
身動きがとれなくなった。
軽い気持ちで手を出した株が暴落して
買い足していったらまた下がって引くに引けなくなった。
こんだけの話です。

しかし、手をつけたが百年目。
今度は世界が「旅順」を注目してしまった。
日本にはお金がないので高橋是清の日本債公募で
戦費を賄おうとしていましたね。
借金で戦争をしている。自転車操業なのです。
一敗でもすれば日本債の人気はガタ落ちなのだ。

こうなると、旅順を攻めるなとはいえない。
誰もいえない。どうしても攻略しないとならなくなった。

つらいでしょ(汗)

旅順攻略はつらいんです(涙)