あかんたれブルース

継続はチカラかな

ふたりで紡ぐメリーライフ



寒いですねえ・・・
でも北の方、日本海側の方、山沿いの方は
もっと寒いんでしょうねえ

ルイちゃんも寒い
エアコンもストーブもない山の中
あるのはコタツだけ
それと娘の熊子だけ

熊子は暖ったかい、人間カイロのようです。
だいたい11月下旬から3月中旬以外は室内ではパンツ一丁だそうな
たぶん本人はハリウッドスター気分なんでしょうが
相撲取りのようでもある。

一緒に寝てるんだって。狭まっくるしいけど暖かい



兵庫県在住の木皿泉という脚本家がいます。
けっこう注目されてる人気作家なのですが、遅筆で
けっこう貧乏です。

木皿泉は一人ではなく二人、夫婦です。

お笑いの放送作家だった夫が木皿泉というペンネームで
活躍していた頃、新人賞を受賞した現奥様に注目し
付き合いがはじまって、脳梗塞で倒れ半身不随になって
そのとき「この人と一緒じゃないと脚本は書けない」と
彼女は結婚を決意し実行した。そのときから
ふたりでひとりの木皿泉が誕生しました。

ふたりのマンションにもエアコンがない。
扇風機もありません。
電子レンジも、トースターもなかったかな
パンはガスレンジの魚焼きで焼いていた。

それでもこの家の朝食はちょっとしたホテルのそれとかわらない。
奥様の工夫と愛情の賜物です。
車椅子生活を余儀なくされても
食通だった旦那様にすこしでも楽しい日々の生活を楽しんでほしい
それが理由のようです。

エアコンなどの冷暖房器具がないのは
この家庭の決して豊かではない経済状況もありますが
それだけではなく、なんというか、
それがふたりの生活の、生きる、ポリシーのようです。

だってね、夏の暑いさなかに、奥様の実家から
心配して扇風機でも送ろうかという申し出を断っていましたもん。

ふたりは「しあわせ」というものを考えて話し合って
それを実践しています。決してヤセ我慢だけじゃないんですよ。
すこしはそれもあるでしょうが
なんか一度それを受け容れたらそれが当たり前になって
また違う不便がうまれることを知っているようでした。
開けはなたれたマンションの窓から吹き込む風は
気持ちよさそうでもあった。

比較的裕福な家庭に育った奥様は学校卒業後に商社勤務
その日常がつまらなくて試み書いたシナリオが認められ
この世界に入った。真面目な人ですが理想が勝ちすぎて
ちょっと世間ズレしている感もいなめない。

対して旦那様は幼い頃から足に軽度の障害をもっていた。
そのコンプレックスを笑いで克服しようとしたようです。
やすきよ漫才の台本を手がけたほどですから
その世界では一流です。どちからいえば酸いも甘いも知った世間師。
そんな彼が、彼女の若々しい才能に注目した。
普段は無表情のような旦那様ですが
ときどきみせる笑顔にはなんというか不思議な魅力があります。

ふたりのドキュメンタリー番組をながめながら
わたしはそれでもすこし不安になった。
献身的に一生懸命な彼女のことが心配になった。
くちにだすほどでもない、ちょっとだけの不安です。

番組のなかほどでなにげないふたりの会話のなかで
そのことが、旦那様のくちから零れました。

「そやけどあんたは介護ウツやないか」

陽気な彼女の表情が一瞬だけ固まった。
そして彼女が語りだす。またもとの表情に戻って元気に明るく

そのときの、傍らの旦那様の表情がなんともいえない
なんというかすまなそうなというか
労わるというか気遣うというか
そののっぺりとしたむくんだ顔から微かにそういう
繊細な表情がうかんだのだ。

たぶん、カメラがとらえることのできない
ふたりだけの日々の日常のなかでたまにね、そういった
修羅場があるんでしょう。決してそれは旦那様にどうこう
ということはなく、彼女は、奥様は、あの気性だから
自虐的に自分を苛み自身を罵るのだろう。

それが旦那様は痛いんだな。
歯がゆく、つらい。
やさしい人なのです。

ふたりは「しあわせ」というものを考えて話し合って
それを実践しています。
わかったからといって、それが得られるものではない。
それはとてもたよりなく零れてしまいそうなものだ。
だからふたりで寄り添ってそれを積み重ねるように
実践しながら育んでいます。

旦那様の朝の日課は神棚に飾った大黒様に
「宝くじが当たりますように」でした(笑)

わたしは、男女に限らず、
愛を成就させていく方法は「共同作業」にあると思う。
この夫婦の自然で優しい関係を垣間見て
そのことをいまさらながら噛みしめた。

そこに愛としあわせは
確かにあった。



今年の夏、暑かったですね。
節電節電と騒がれていましたが、
国道の交差点の信号待ちで
エアコンのついていないクルマの窓を全開にして
この姉妹のような美人母娘が豪快に笑っていました。
それを何台ものクルマが振り返りながら通りすぎていった
ということ本人がいっておりました(笑)。

ここにも愛はある。