馬太郎愛の激情『うしろやぐら』
昭和34年晩春の斜陽を
時森勘一は新妻鏡を伴って広島から省線で呉に向かっていた。
向かい合った二人に車窓から指す夕陽が眩しい。
「ねえワタシを食べたい?」
俺のハートは腹ペコさ
「ワタシの愛でトキメイテお腹いっぱいじゃないの?」
愛でお腹はふくれない。
むしろ、ときめいたぶんだけ膨らんで
俺のハートは腹ペコなのさ
「ハートが腹ペコってなんか変!」
ああ、俺は変になっちまったのさ
「だれのせい?」
お前のせいだ。
つづく