サインはブうです（3）
あいつはアホなんだけど
うちのブログではとてもマナーが良かった。
知性とか知識とかはないけれど
そこはかとない気遣いができてる。
自己主張の強いネットの馬鹿女にうんざり
だったから、なんか新鮮だったよ。
実際に一度そのことを
褒める記事をアップしたこともある。
決してとってつけた話じゃない。
品性ってそういうところにでるんだ。
そんなあいつを元気付けようと
CDデビュープロジェクトを立ち上げた。
ブログの仲間が役割分担して大阪で録音しよう！
翌朝30分で作詞して
音夢嬢に作曲してもらった。それがこれ
http://blogs.yahoo.co.jp/djkxq447/31398443.html
2007年の4月だったんだね。
ジャケットも作った。
http://blogs.yahoo.co.jp/djkxq447/31603730.html
うまいだろ。だってプロだもん。
たださあ、これが不味かったかもしれない。
最初にブログのバーチャルな人間関係が
リアルになることで、引いていくものがいて
楽曲が出来てジャケットまで出来て
腰が引ける者とかでて
結局、音夢嬢以外みーんな四散しちゃった。
なんちゅう連中だ。
調子いいことばかり言ってイザとなったら
これだよ、これ。まったく愛想がつきるね。
あいつに事情を話して謝ったよ。
「しゃあないやん、みんな賢やし」
あいつは自分と他人を区別するときに
「かしこ」という言葉を使う。
わたしもそういわれている。
「馬ちゃんはかしこやし」
わたしもあっち側の人間なんだろうけれど
まあ特例措置で許されたわけなんだろうかね。
でもね、あいつはやる気満々で張り切ってたんだ。
スタジオも旦那のツテで借りられることになってた
衣装はわたしの注文で真っ赤な晴れ着さ。
「しゃあないやん」
忸怩たる思いに駆られるわたしを
気遣えるそんな察しができる女だった。
当時のあいつの難儀は
抗がん剤治療での副作用だ。
食欲がまったくない。唯一ビールだったら飲める。
でも「あて」つまりつまみ、酒の肴を
体が受け付けない。
体重がどんどん減っていく。
せめてチーズだけでもとかといっても
無理なんだなあ、これが・・・
だから拒食症のかおりくんの気持ちもわかる。
そんなつらい治療を続けていたのも
再発を防ぎ、完治するため
子供達のためだった。
その望みむなしく再発してしまった。
しばらく音信が途絶えた。
一週間後
韓国の繁華街からのスナップ写真で
ブログは再開される。
こっち向いて手をふってる
いい笑顔だったよ。
手にはしっかり煙草を挟んでいたけどね
あの写真はいい写真だったな。
ノーメイクだったけど
美人だと思った。
