あかんたれブルース

継続はチカラかな

頑子の嘆き(2)



そんな頑子に友だちができました。
河童の三平です。
なんで河童が海にいるのか?
近頃は関東近県の河川が汚れて
河童も生きづらいのだそうです。

三平はビキニじゃ寒かろうと
頑子のためにワカメで作った服を
プレゼントしましたが
頑子はダサイとか磯臭いとかいって
それを決して着ない。
結局コタツの掛け布団にしました。
タツ
この浜辺には海からなんでも流れてきます。

実は三平は昔、頑子が飼っていた
緑亀の亀吉でした。
お祭りの屋台の亀すくでゲットされて
頑子に飼われていたのですが、
そのうち案の定、飽きて
自然に戻してあげるといえば聞こえはいいのですが
早い話が近くの遊水公園に捨てられたのでした。
「元気に逞しく育って恩返しにくるんだよ」
そういって頑子は自己満足して帰っていった。

亀吉は狭い水槽でしか泳いだことがなかったので
あっという間に水に溺れ流されて下水管に直行。
小菅の浄化施設あたりで力尽きてしまいます。

そこに神様が現われて
可哀想な亀吉よこの世になにか未練はないか
と、問えば
「はい、ご主人様に恩返しがしたかったです」
この言葉に感銘を受けた神様は
亀吉を河童の三平にしたのです。

話を戻して

その日はとても寒かったので
三平は銭湯に行こうと誘いましたが
頑子は出不精でずぼらなので首を縦にふらない。
でも去年からずっと風呂入っていないので
臭いので三平は実は閉口してたのです
が、そんなことを口走ると
頑子の逆鱗に触れるので、ああ温泉はいいなあと
行ったこともない日光や鬼怒川の温泉の話を
でっち上げては頑子に語るのでした。

温泉かあ・・・いいなあ・・・

頑子の心が揺れた。
そして瞳が輝いて、口元がすこし歪みます。
三平はその表情を見逃さない。
嫌な予感。
この間もこの笑みが出た後に
髪の毛をむしられて紙に巻いて煙草代わりされた。
「いいじゃない河童だったら河童らしく」と。

頑子はいつのまにか世の中の矛盾や不満を
三平のせいにして精神のバランスを保っている。
とても我が儘な性格になってしまいました。

ねえ。

な、なんですか(汗)。

「その背中の甲羅はがして露天風呂にしようよ」

そ、そんなあ!

結局、頑子のいうなりに三平は背中の甲羅を
ばぎっ、って剥がされた。
頑子は鼻唄まじりにそこに焚き火で沸かした
お湯を注ぐ。
これがまさしく甲羅風呂だ。しかも露天風呂。

甲羅を剥がされた三平の背中は
真っ赤に腫れあがって
痛々しい。
そして冬の夜風がそれを刺す。沁みる。

ああ、いい湯加減極楽極楽と
頑子は上機嫌です。
「あの頑子ちゃん僕も入っていいでしょうか」

「いいわけないでしょ!
 エッチ、スケベ、変態、エロ河童!」

ということで、頑子が上がってから
三平はお風呂を頂いたのですが
すでにお湯はぬるく、ほとんど水みたいで
それがまた、背中に沁みるわけだ。
心も体も寒い。

風呂からあがって、残り湯を捨てながら
甲羅を洗って(風呂掃除ですね)

横で頑子は高イビキ。
鼻から風船
それを三平はじっとみつめている。
それは大きく膨らんで、ぱちんと
壊れました。

翌日、目覚めた頑子は
甲羅風呂の上に置かれた置手紙を発見する。
そこには「ついていけぬ」と
日本一短い別れの手紙だ。

それを手にした頑子は叫ぶ。

裏切り者!

なんて私って不幸なの。
こうやっていつも裏切られていく
人生なんて、人間なんて

ま、だいたいこんなもんだよな~あ