あかんたれブルース

継続はチカラかな

法を背景にした力の支配じゃ無理がある。



未観のDVD鑑賞
本日は『戦艦バウンティ号の叛乱』(1935年也)
史実をもとにしたベストセラー小説の映画化
主演はクラーク・ゲーブル 

昔わたしが観たのはリメイク版の『戦艦バウンティ
こっちは最後は主人公(マーロン・ブランド)が
火事で大火傷をして死ぬのですが
それが印象的で、いやあ火事で死ぬのは嫌だなと
いまでもトラウマになっています。
この両作品どっちが史実に忠実かというと
最初のゲーブル版
叛乱者たちは無事逃げ延びるのですが
その後には悲惨な運命が・・・

さて、この映画のポイントは叛乱の原因たる
船長ウィリアム・ブライ(チャールズ・ノートン
の強欲、冷酷、残虐の暴君ぶりへの反発
リーダーとしての資質を問われるものです。
今だったらパワハラモラハラ虐待いじめとなるが
当時の英国海運法では正当なものとして
認められいた。だから「叛乱」なのですが・・・
この事件でその法律が修正されたといいますから
社会問題化するショッキングな事件だったんでしょうね。

これも大航海時代の「非日常」という
不自然な環境から、それを束ねる力の支配の
過剰を描くものですね。

ところで、そういう暴君ブライ提督なのですが
この作品の面白いのはその非道を描きつつ
叛乱後に小船で追放されるブライ一行の
過酷な公開を束ねるブライ船長のリーダー力は
非常に高いのだ。
この船長、いい人?わるい人?
な~んて判断基準では混乱するかもね。
つまり思うにはこの艦長は戦艦バウンティ号では
荷が重すぎた。せいぜん小船の数十人程度の器
だったってことでしょう。
裁判では無罪になりますが、その後は逼塞して
さびしい人生を送ったそうです。

また、叛乱を起こした乗り組員たちは
その後分裂や抗争に巻き込まれ
ほとんどが死んでしまったそうです。
さらにその子孫たちはアメリカ人のイカサマ師
による暴君支配で苦しめられる
いつまでたっても力の支配の因果から解放されない。
考えさせられますよ。

よく時代劇で悪徳代官が登場して
暴虐の限りを尽くすというのは定番ですが
実際そういう力の支配の度が過ぎて
反乱一揆にでもなったら
それ以前に幕府の耳にでも入ったら
管理責任を問われる左遷失職ってあったんじゃない?
それってけっこうリスキーだと思うのだけど・・・
大河ドラマで肥後を任された佐々成政はそれで
しくじって粛清されてる(切腹)。
まあ代官は徳川直参ではあるけれど
だからといって許されるほど幕府は甘くはない、

どうも明治の全国的な農民騒乱事件と比べると
異質なように思えるんですけどね。
水戸黄門が漫遊しると全国津々浦々まで悪代官だらけ。
そういうので三百年も施政が保てるものだろうか?
こういのにもマルクス史観なんてものが
影響してるんでしょうかね。

戦艦バウンティ号の叛乱』は
思わず血圧が高くなるような昂揚もあって
78点でどうでしょう。
カラーだったらタヒチの海とか楽園が描けて
80点台はたたき出したことでしょう。
作品はちょっと救われるラストで〆ていましたね。