あかんたれブルース

継続はチカラかな

串カツ食えば鐘が鳴るなり一心寺



枝雀の演目に『天神山』という噺があります。
前半は「野ざらし」・「骨つり」
後半は「葛の葉伝説」のパロディ
この噺は味わいがあって
後味がとてもよろしゅうございます。
https://www.youtube.com/watch?v=KRv4J3kLiDs

この噺に出てくる一心寺は天王寺動物園の近く
新世界のづぼらやのでかい提灯をくぐって抜けた
先にある古くて大きな浄土宗のお寺さんです。
こうやって落語の舞台になるわけで
由緒正しいわけですね。

わたしも参詣したことがある。
鹿児島から上京して三十数年ずっと東京だった
わたしが、大阪の観光名所というわけでもない
この寺に参拝したのは
ここに律子の亡き母が納められているという
話を聞いたからだ。
といっても墓石があるわけじゃない。
供養搭に納められているそうで、
墓のことにうるさい地方の出であるわたしにとっては
奇妙な話だった。
土地が少なく古い歴史をもつ大阪であれば
それはさほどめずらしい話ではないようだけれど
生粋の商家の家系で中流に位置する彼女の実家が
なぜその縁者を共同墓地なんぞに入れたのか
合点がいかなかった。

聞けば、病弱だった嫁が亡くなって
残された二人の娘を抱えた父親に
親戚がすぐに後妻をと勧めた。
それに応じて再婚した父親は、前妻の骨を
代々の家の墓に入れるのは験が悪いというので
そういう扱いにしたそうだけど
なんとも、そっちのほうが験が悪そうに感じるのは
わたしだけの感覚なんでしょうかねえ。

案の定というか、そこからの律子の家は傾いていく。
姉はグレて出奔。継子いじめにあった律子は
いまだにそれを引きずっている。
だからどうのこうのとは口に出せないけれど
なんにしろ母恋しの律子が
ほとんど墓参りしたことがなく
最後に行ったのは三十年も前のことだというので
そういうのはよろしくない
じゃあ今度一緒に墓はなくとも
墓参りに行こうというので
参ったのがこの一心寺だったわけです。
あれはもう五年ぐらい前ですかねえ・・・

境内に入って、まずその敷地の大きいことに驚いた。
大阪の寺なんてそうそう知識も土地勘もありません。
東京でいえば池上本門寺をこじんまりした感じで
そのなかにお墓がずらーっとある。
築地本願寺や芝の増上寺なんかよりも広いよ。
そして意外だったのは律子のところだけじゃなく
供養等で共同埋葬された方々がえらく多いことだった。
その生年没年とかで旧暦に振り分けられて
その歳年別に仏様をあてて
お参りするシステムなっていた。
由緒が古くても都市部になるとこうなって
いくんですね。

東京の築地本願寺にも共同の納骨堂が
本堂の下の一階にある。
あそこは一区画7、80万でしたかね。
安いと思うよ。
東京郊外、近県に墓地を買えば、200万以上
墓石立てれば別に150万前後(ピンキリ)かかるし
毎年管理料も支払わないといけない。
ちょっとした不動産だけど、売買は難しいみたい。

この落語ではヘンチキの源助が花見ではなく
墓見としゃれこんでお寺の墓石のなかで酒を飲む。
東京の青山墓地では花見の季節になると
墓地の敷地内にシートを敷いて毎年どんちゃん騒ぎだ。
ま、桜の名所ではあるとはしても
ヘンチキもこうなると何が常識なのか
不思議なものです。

一人でやればヘンチキだけど
みんなでやれば立派な季節の風物詩だ。
泣き相撲やナマハゲや朝顔市みたいに
NHKの今日のトピックスで紹介される類だね。
なんかインチキっぽいなあ(笑)

それとは対照的に
それ以外の青山墓地は閑散としてる。
東京の人たちはお彼岸とかお盆とか決まった日にしか
墓参りしませんからお墓は普段は荒れ放題が多い。
地方によっては世間体もあって花を枯らしませんから
儲かるのは花屋だけとこぼしていますよ。
そういう話をこっちの人に話すとハナで笑われるよ。
そういう地方の人々の信心を小ばかにするように。

常識とか、その基準ってなんだろう

今年は無理だけど、来年の桜の頃にでも
もう一度律子を連れて一心寺に行きましょうかね
報告もあるし、新世界でだるまの串カツでも食うか。