あかんたれブルース

継続はチカラかな

呪いの『居酒屋兆冶』

魔性の女が追ってくる(2)


断っておきますが、『居酒屋兆冶』は
高倉健の代表作ではない。
どころかとんだタタリ作品といっていい。
原作は山口瞳
企画として、主人公兆冶に健さんをと
だったんでしょうが脚本と演出が不味かった。
健さんが足枷になったのかもしれない。
この映画で健さんの男を謳ってくれるなよ。
そんな奴は味噌汁で顔でも洗いなさい。
健さん始終困惑しっぱなしだったじゃないか。

『居酒屋兆冶』は大原麗子の代表作だ。

この作品のヒロイン「さよ」に
大原麗子はとり憑かれてしまった。
呪われ憑依して一世一代の怪演をやってしまった。
彼女の死因はコレだっていっても過言じゃない。
それは大原麗子追悼番組で
監督降旗康男自身が告白している。

それは降旗自身予想外の結果だったと思う。
クランクアップして試写の際、みんなから
大原麗子の名演技に喝采が送られた。
監督として嬉しいことだったと思うけれど
彼女によって主役から作品すべて
喰われてめちゃめちゃにされたことを
どれほどの関係者が理解しただろう。
わかっていても言えないよね。
25年経って、大原麗子の追悼番組で
降旗康男自身戸惑っていた。

この作品の失敗の原因にはミスキャストがある。
それが健さんであり、大原麗子なのだが、
さよの夫左とん平から
伊丹十三平田満ちあきなおみ・・・
健さん映画常連の田中邦衛まで無残であり
トドメはきっと加藤登紀子なんでしょう。
ぜ~んぶじゃないか(汗)

安易だったんだと思う。
素材としてこの原作が健さんにピッタリだと考え
企画もすんなり通って、共演者も
いつものメンバーを布陣させた。
ヒロインには大原麗子がいいだろうと
まあ、普通こう思うよね。

この作品でヒロインさよを精神病扱いする場面がある。
実際にストカーそのものだしね。
そして彼女は実家を燃やして出奔しススキのホステス
に身を落とし自暴自棄となって酒で自殺する。
その間、健さんはまったく身動きとれません。
金縛り状態といっていいでしょう。
このどこがカッコイイのだ?

この作品は不倫というテーマが敷かれている。
降旗監督は例によってそれを高倉健
なんとかしようと考えた。
健さんといえば、例によって義理固く
「しがらみ」のなかに生きる男の中の男だ。
そこに哀愁とかつらい人生を描けると
安易に考えたんだと思う。
とっころが、藪をつついたら
そこからさよが大原麗子にとり憑いて
化けてでてしまった。

降旗監督が化学の実験で不用意に用いた
大原麗子という物質が化学反応を起こして
大爆発してしまったという感じです。
それほどの破壊力だと思う。
30年経ってもその呪いの放射能は高濃度のままだ。
今回健さんの追悼番組で恐いもの見たさで
敢て封印を犯して夜中に一人で
「感傷」しましたが
最後まで観れなかった。
とくに、高倉健にとっては痛恨の作品
汚点といってもいいかもしれない。

劇中、大原麗子健さんにいう。
「みんなあなたが悪いのよ」
呪いだね。

大原麗子はパーソナリティ障害だったんでしょう。
彼女の実父がDV男だった。
幼い彼女はこの馬鹿男からグーでしかも
指輪の突起部分で殴られていたそうです。
そういうのが原因で離婚。
そして母親からも見捨てられてしまった症候群に
苛まれていたそうです。

それだけでも可哀想だね。
あれだけの美貌というかキュートな女性なのに
あの淋しさは演技じゃなかったんだ。
そして気分障害からすぐ何かに没頭しちゃう。
さよという作られたキャラクターに
どっぷりはまってしまった。
クランクアップ後も「さよが抜けない」と
つぶやいていたそうです。

それを健さんだけになんとかしろ
というほうが酷だと思うよ。
降旗監督が懸命に繕えば繕うほど
兆冶は間抜けになってしまう。さすがに
責任を感じたか
次回作『夜叉』でなんとか償いとした。
その意味でも、いろいろな意味でも
この『夜叉』は東映を離れた健さん
最高傑作なのだ。

越えられなかった壁
『駅 STATION』(公務員)
『居酒屋兆冶』(飲食店経営者)
『夜叉』(漁師ただし元やくざ)

プロフィールに頼るしかなかったわけだ。
酷ですが、これが降旗康男のボーダーだ。
まあねえ倫理なんて大問題を
降旗監督一人におっかぶせるは確かに酷だ。

それにしても『居酒屋兆冶』
録画しちゃったよ(汗)
なんだかんだいってまた観るんでしょうねえ(涙)
さよが抜けません(汗)