あかんたれブルース

継続はチカラかな

男心にい男が惚れえて♪

それでも花は咲いていく 11


前田健の『それでも花は咲いていく』で
二次元の恋人に夢中な主人公
要は漫画のキャラに恋したオタク女の話です。
それこそ成就することのない恋愛。
リアルとは対極のバーチャルの極みなのですが

彼女が恋したオリフという戦士がなかなか良い。
『アイルの剣』という作品のサブキャラなのですが
陰徳の人物で
「彼は陰で人を支える優しさがあり」
「大事なものや必要なものを
 その人が目に付くところに置いておく」
その人の役にたちさえすればいい。
感謝されなくとも・・・
なんともストイックな人物なのですが
この本のオタクの主人公の女性はそれにシビレタ!
なかでも致命傷だったのが
苦難に心を閉ざした女の面倒をみるオリフに
この女が「放っておいてください。
優しくされるのには慣れていないから・・・」
この言葉に対してオリフが放った言葉は
真っ直ぐに彼女を見て
「じゃあ慣れろ」といった。
感電死です。

わたしが感心したのはこの『アイルの剣』なる
漫画は存在していなくて、すべて前田健の創作
なのだ。この短編のために彼が作った妄想
そのサブキャラにオリフというキャラがいる。

オタクじゃなくても惚れるよ。
また、このオタクの28歳の女はお目が高い。
まあそれが故に現実の恋愛ができないという
ハンデを背負っているのですが

でさあ、現実逃避なんだかんだと
この主人公のオタク女を批判するのが世の常
お決まりになっていますが、
彼女が現実の恋愛をするために
その志や感性のハードルを下げるっていうのも
なんか解せないんだよなあ・・・
別にいいんじゃないの。

長崎ぶらぶら節』の愛八を横綱としましたが
対戦相手がいないからって手近な幇間の馬太郎と
泥仕合することもないんじゃないかと。


前田健のこの作品では
そのへんを上手にその呪縛を解いてくれてる
なんとも優しい物語に仕立てている。
「ヒヤシンス」でも思い知らされたけれど
優しい人なんですね。
彼はどんな人を好きになって恋しているのだろう
男なら、前田健に惚れられるような男に
なりたいと思う、わたしは変態か?

https://www.youtube.com/watch?v=GL5PiG8VL4E