あかんたれブルース

継続はチカラかな

ニシンと石炭とベストセラー



あと3日と8時間です(汗)
さて、先日出版不況は本当か?というテーマで
ネットで検証記事がアップされていました。
なにをいまさらと思うのですが
データをもとに
店舗数ではなく売り場面積や直販の数字
ネット販売、電子書籍などのことを指摘して
実態はそうでもないよ~という内容。
http://thepage.jp/detail/20150126-00000009-wordleaf?page=3

しかしそれはデータの見方の話で
実質的に出版業はこの20年以上右肩下がりなことに
間違いありません。
活字離れというわれて久しいのですが
ネットの普及で(アナログ)紙媒体の需要が縮小した
ことは紛れもない事実なのだ。

20年前、出版業界にいたわたしはこりゃヤバイと
早い段階でそれを察した。
フリーペーパーの台頭やDTPデジタル化・・・
わかっていてもどうにもならない(汗)
目先の利いた人ならばそこからビジネスチャンスに
するんでしょうが、わかっていながらモタモタしてて
ずるずる引き際を誤ってしまったのでした。

それ以前に写植屋さんは壊滅状態だったし
印刷屋はDTPと製作に切り替えだした。
そうなるとカメラマンとかデザイナーは
ジリ貧で生殺しに追い込まれていく
でも20年前にそのことをなかなかみんな信じない。
恵まれてる編集者が信じないのは仕方ないけど、
知り合いのカメラマンも信じなかったもんね。
信じたくなかったのかもね。
デザイナーはDTPに逃げられる人はいたでしょうが
カメラマンはアウトでした。
デジカメの性能は素晴らしいのだ。
クリエイターたちへのデフレの鉄槌だ。

手元に2001年発行の『出版大崩壊』(イースト・プレス
がありますが、ここになぜダメかが網羅される。
様々な要因のなかで
編集者の給料が高すぎる(大手のみの話)がある。

出版業は文系に花形職業だった(過去形だよ)。
新聞社、出版社、広告代理店と人気だったわけだ。
給料も良かったです。
わたしが関わっていた新聞社系の出版社では
30歳で年収1000万円でしたからねえ。
その出版社も10年前に潰れた。
絶対潰れない、本社が潰させない、なんて
豪語していたものですが、アッという間でした。

でね、そんなことはどうでもよくて
上記の無理記事とは別に出版不況の実態を
日本人の活字離れについてと重ねて
考えてみるわけです。

これはもともと活字離れというよりも
出版業界のバブル崩壊だったんだなと。
そして日本人の読者人口は決して減ってはいない
としみじみ思うわけです。
需要と供給でいうところの過剰供給
だった、だけのお話。
出版社も出版点数も多すぎただけ
だったんでしょうねえ。
当然そこには情報を得るツールが多様化した
ってこともある。
紙媒体は1970年代がピークだったわけで
そこには団塊世代が消費を支えていたことが
あるでしょう。

なにより媒体という存在が大きく変容した。
情報多寡の時代に
ネットの普及から誰でも媒体を手にして
モノを言える(発信する)手段を手にした。
ご承知のようにネットは無記名で玉石混淆です。
(それ以前のマスコミが真っ当とはいわないけれど)

そこにきて言論(報道・表現)の自由が
問題になっているわけだ。
混迷、混乱の時代に入ったわけです。

そういうなかで出版物にどう価値を見出すか?
この問題はいま突きつけられたものではなく
20年以上前からの宿題であって
それをズルズル先送りしてきた結果がこれだよね。
それは出版業界だけでなく
町の本屋さんが消えていくのと同じで
酒屋が八百屋が魚屋が肉屋が薬局が
乾物屋が文房具店が金物店が時計屋が・・・
消滅していってシャッター商店街になって
いるのと同じ話なんでしょうねえ。
10年で7割以上の職種がなくなっているそうです。

小売業だけでなく
『マッサン』でニシンの話が出ていましたが
炭鉱産業は九州から北海道へと流れて火が消えた。
幸福の黄色いハンカチ』で健さんはどういう
事情で北海道に来たわけだ。
鉄の時代もあった。
新日鉄といえば一流企業だったのに。
20年前、10年前、
日航は、西武は、ダイエーは・・・
時代が物凄いスピードで加速している。

そんななかでの出版業界は
いまだに過剰生産を続けています。
まるで淘汰するための自傷行為の儀式のように。
体質が古いんでしょうねえ。
いったん壊滅しないと再生はならない。

作られるベストセラーではなく
良い本は売れる
そういう時代の復古を願います。

あと3日と6時間半(汗)