あかんたれブルース

継続はチカラかな

麦と兵隊、母と馬


今日は透析日でもデイサービスの日でもないので
雨の降らないうちにと母を病院に連れていき
定期のお薬など貰ってきました。

昼すぎ、居間で母が歌いはじめた。
デイサービスで教わって歌詞を書き記した
♪徐州々々 でお馴染みの軍歌『麦と兵隊』だった。


最初は聴き流していたのですが
その二番の歌詞
♪友を背にして道なき道を
 行けば戦野は夜の雨
 「すまぬすまぬ」を背中に聞けば
 「馬鹿をいうな」とまた進む
兵の歩みの頼もしさ

に、琴線が揺れた。大揺れさ。
なんか染みるは・・・
私達世代の中坊の頃、フォークソング全盛で
たとえば音楽雑誌の
たとえば井上陽水のインタビューとかで
好きな音楽は?と問えば、ビートルズ
嫌いな音楽は?と問えば、軍歌。
というのが定番だったものです。
これは陽水だけじゃなく、お約束だった。

そんななかで、鹿児島南薩地区の中学校の
ごく一部の生徒の間では軍歌が大ブレークしてた。
鶴田浩二の特攻物のLPを仲間同士で貸し借りして
唄の歌詞は勿論のこと台詞まで覚えたものです。

こら、勉強せんか!

東映では任侠路線から実録物に移行する
過程での試行錯誤で何本かの戦記物が撮られてた。

そんな時代と環境と経験をもって育ったわたしには
軍歌というものを無条件で毛嫌いする動機がない。

なかでも、この『麦と兵隊』は秀作ではないか。
この郷愁と苛酷な旅情感
よく戦意向上に違反するとならなかったものだと。

そして、この唄の五番目の歌詞には
「ひとり平和の色染める」とある。
後付けなのかしりませんが
それでも、この軍歌は名曲だと思う。
『泥の河』で少年が歌ったあの軍歌のように。

母が書き記した手帳の歌詞は怪しく
ところどころどんずまったりで四苦八苦みたいで
ごそごそ起きてタブレットで検索して
歌詞を便箋に書き写してルビもふってやったら
大層喜びました。
ついでにYou Tube で元歌も聴かせたり。

十八番にして今度デイで唄うそうです。
はりきってる(^O^)


なお、この唄うには原作があって
九州の芥川賞作家火野葦平の『麦と兵隊』がそれ。
火野は任侠(実録)小説『花と竜』の作者でもあり、
この物語の主人公は父親である。