せつない話 2
夕食をおえて
母とちゃぶ台に向かいあってると
母「あのな」
この印鑑を作り直してもらおうとおもうのだけど
と、わたしに見せる印鑑は
旧姓『池内』のシャチハタだ!
馬「あのなあ・・」
どう説明してもよくは理解してもらえません。
だいたい家中の判子という判子はサチコが取り上げて
川崎に持って帰ったはずなのに
いったいどこから出してきたのか。
取り上げて隠しました。
「あのな」と母が左薬指の指輪を自慢げに見せる。
もう何度も聞かされた話。
もともと純金の指輪だったのを
ぐにゃぐにゃするからと眼鏡屋に行って
2万円支払って18金の指輪に作り替えたもの。
聞きたくもない。見たくもない。
母「あのな」
今度はきっと眼鏡の話だぞ。案の定
母「こんた松ちゃんが眼鏡」
母の友達に松ちゃんという晩年からの友人がいた。
その人が亡くなる半年ほど前に
自分の眼鏡を母にあげたのだそうです。
奇しくもそれが形見になってしまった。
母の友達はもうほとんど死んでしまっている。
形見はいいんだけれど
馬「あんな、眼鏡は自分にあった眼鏡しろよ」
母「眼鏡が無が」
馬「あよ、まだ・・」
で、やっと探し出てきた自分の眼鏡は二つとも
フレームが壊れている。
そのうちのひとつは地元の眼鏡屋に修理に出して
片方のレンズ4万円両方で8万円もしたと
ブツブツ言ってる。
まったく年寄り相手に、年寄りだと思って
聞きたくないよこんな話。
糞眼鏡屋潰れてしまえ!
駅前のスーパーの中に出店してる眼鏡屋に
持っていったら2本で2万円でお釣りがきたよ。
なのに、「こんた松ちゃんが眼鏡」
馬「だから自分の眼鏡しなよ!」
しみじとテレビを眺めて
母「妙おなああ、眼鏡をかけるよりかけん方が
よく見えるんだわさ」
だったら、かけるなよ(ToT)
老人と馬
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