あかんたれブルース

継続はチカラかな

白い悪魔とは

『白鯨との戦い』(1915年)を観る。
『白鯨』といえばグレゴリー・ペッグの作品を
思い出しますが、
ハーマン・メルヴィル原作『白鯨』はこれまで何度も
映画化されているそうです。
なわけで当然わたしは
ペッグ版の『白鯨』(1956年)しか知らない。
観たのは中学生頃で水曜ロードショーだったかと思う。
まだCGもない頃の特撮映画でなんかチャチかった記憶が。
それと小学生だったか少年マガジンに連載されてたはず。 

それぐらいの予備知識で臨んだわけですが
なんか原作と違う。
といってどこまで原作を知ってるか怪しいのですが(汗)

わたしが『白鯨』を意識したのは
30代後半だったか
打ち合わせ中にカメラマンとの雑談で
この作品の原作が文学的古典的名作だと聞いたことからでした。
意外だった。
調べてみたところ米国文学の傑作
いや世界十大小説のひとつに数え上げられる作品だとか。
そこから興味はわいたけれど
それから20年の歳月をうすらぽかんと過ごしていたわけです。

さて、この『白鯨との戦い』は原作とは違うけれど
実話に最も近い作品に仕立てられていました。
つまりメルヴィルが『白鯨』を書くあたって
彼自身の体験と実際にあった事件をベースにしている。
そして原作同様にヘビーな作品なのだ。
日本風にいえば『ひかりごけ』のようなものでしょうか。
スケールが違うけど

広大な大海原に浮かぶ方舟
この隔離された世界での相克は
バウンティ号にも共通する人間の人間社会の
宿命なのか。

私的にはラストの人間の尊厳を試される船乗りの決断に
強く感動させられました。
カネと地位 VS 真実を嘘に塗りかえる裏切り

あの一等航海士は、船長は
後者を選んだ。
俺にできるだろうか・・・

怖い映画だった。
白鯨が怖いというよりも
海が怖い。
そして18世紀とか19世紀とか20世紀初頭
とかの時代背景が怖い。
不衛生で過酷で途方もなさの恐怖でしょうか
パピヨン』の『恐怖の報酬』の怖さだ。
南米とかインド洋ど真ん中とか気が遠くなる怖さがある。

で、つくづく
日本に、日本人に生まれて
よかったなあと
塩辛でお茶漬けすすって胸を撫で下ろすわけだ。
と同時にギャツビーふくめて
アメリカの文学には脱帽してしまうのでした。

しかしなあ
鯨油から石油に代わったのって
最近の話なんですね。

人間が一番こわいということだ。