あかんたれブルース

継続はチカラかな

アルプスのおばはん

高校時代のサチコは仲良し五人組の間で
ハイジといわれていたそうです。
アニメのアルプスの少女のようなキャラだと。
ま、サチコ以外はみな成績優秀で
サチコは別名のび太ともあだ名されていた。
ハイジとのび太・・・なんとなくイメージできますね。
兄の目からしたら
中島みゆき風にいえば怜子
自信のない女だった。
そんなサチコも変わります。
サチコの変化を肌身で感じたのはロンドン五輪の頃
うちの家族で二泊三日で海に行ったとき
高速の料金所でITCが反応しなかくて注意された。
そのことが理解できずに
運転してたサチコが逆ギレ!
これまたそのことを悟り、平謝り。
という顛末を垣間見たときだった。
自信がなくて他人に気ばかり使っている女だったのに
どこかでなにかのときに空気が抜け出しているようだった。
ま、どこかに自信が宿ったともいえる。変な話。
うつ病だったかおり君の名作ポエムに
朝起きて、まず祈ることは
今日一日、正当に歓べますように
正当に怒れますように・・・・
正当な喜怒哀楽を求める祈りに私は唸った。
その話をサチコにしたら鼻で笑われた。
その頃はサチコはすっかり世間ずれした中年女に変貌していた。
ハイジといわれのび太といわれていたサチコ
なんか兄として複雑だった。
社会に出てそれなりの苦労も味わってきて
そらりゃあ変わりますよ。
自信がなくて他人の目ばかり気にしている
兄として困ったものだと思っていたんですが
こんな風に変わるとは・・・
うちの地元に人気の手作りパン屋があって
そこの食パンが絶品なのです。
食うこと即幸せのサチコですから
そこで菓子パンと一緒に食パン半斤買ってきた。
で、ぶうぶう怒ってる。
「どうしたん?」と問うと
五枚切りの食パンを買ったら一枚がこんなに薄いと
いまから返品に行ってあの店員に文句言ってやる
という剣幕なのだ。
「これこれ食パンの枚数を数えてごらん
 それは半斤をスライスした端数分だよ
 五枚切りにプラス1だから損とかインチキじゃあないよ」
・・・サチコは絶句した。


・・・今日一日を正当に怒れますように・・・


女性は女の子から女に妻に母親にと変容する。
サチコは男性恐怖症が入っているから
恋愛はできない。
結婚もしてないし子供もいない。
それでも、年齢の目安という尺度で
人は変わる大儀をもてるものです。
それがどうも四十を越したあたりなんでしょうかね。
これは男も同じだ。

もうそろそろいいだろう。と

やけに斜に構えたり訝ったり
あたしゃちょっとうるさいよと。
それが自然に身についたものならいいけれど
付け焼刃だからなんともそぐわない。
遅咲きの中二病のようなものです。
臆病で善良でやさしいサチコに
みょうな自信が芽生えて
ときどき嫌な中年女が影をさす。
男性恐怖症といっても兄貴は別なので
なんか私に対する風当たりもその頃からメキメキです。
世の中の矛盾や苛立ちはみんなあなたのせい!
不平も不満も不安もすべて
身近な身内に直撃される。
それですんでるからまだいいけれど
ぶつけられるほうはしんどいわけだ。
そんなのたぶん私だけじゃない。
やるかやられるか
そのどちらか
だからやらない、やれない人は大変です。
やるほうが楽ってことでもないけどね。
社会不安症だなんだと
肩身が狭い思いをして生きてきて
それを四十が過ぎてを頃合に
もうそろそろいいだろうという目安にして
はっちゃけてしまう。
それは安易な動機かと思うわけだ。

かおり君が毎朝目覚めて祈った
どうか今日一日を
正当に笑える怒れる悲しめる楽しめますように
と願う謙虚な気持ちは決して間違いじゃない。
還暦を前にうすらぽかんと馬想う。

これ、韓国に対しても通じる話ね(笑)