読書が嫌いでした。
小学校を通じて完読したのは戸川幸夫の「秋田犬物語」だけ。
多分、中学のときも読まなかったはずです。映画に夢中でした。
高校に入って野球部の新ちゃんの影響で詩を書くようになりました。
センターの荻窪君と三人で「薩摩白樺派」を結成したのはこの頃です。馬鹿でしょ。
室生犀星や武者小路実篤、無理して倉田百三も読みましたがこれはチンプンカンプン。
それからは多少は読んだのかもしれませんが、こういう性格なので
自分の趣味、好奇心の範疇を超えることはなかったと思います。
一転して、読書バブルに陥ったのは、すべて競馬のせいです。
二十代後半から競馬に真っ黒になってしまって、もともと博打は好きですが。
で、どうにもこうにも間尺の合わない状況にハタと気づくのです。
どう考えても儲かっていない事実がそこにあったのですね。
根がセコイのでしょう。そう思っていただいても結構です。そうなのですから。
で、この間尺の合わないところを、なんとしたいと、考えたのが「読書」です。
その画策は、図書館で本を借りればタダ。単行本一冊平均1500円として、
年間100冊借りて読めば15万円。つまり、私の競馬損失が15万円分補填される。
つもりになる。これを向上心と解釈するか、恥知らずとするか、、、。馬鹿です。
誠に浅はかな不純な動機で読書の扉が開きました。
昼下がりの図書館。
西日の射す書棚に戸川幸夫の「いぬ馬鹿」を見つけたのは
昨年の暮れでした。その中には、あの「秋田犬物語」も収録されておりました。
35年の月日は流れ、こんなに汚れてしまいましたが、あの感動はそのままに
「マツ」を愛おしく気遣う中年ど真ん中。いまでも十分泣けるぞ。
もう競馬はやめたけど、「海物語」にハマるオヤジ。
帰りの夜道にふと思いおこしては、また泣く、あのとき止めておけば、、、。と