あかんたれブルース

継続はチカラかな

『優駿』宮本輝 現実を凌駕する小説とは

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 明日はダービです。
 優駿、選ばしもの汝の名は「サラブレッド」
 始めて府中競馬場のパドックで目撃したものは、
 その足のか細さに驚愕と痛々しさを感じました。烏(からす)じゃねえか!
 多くの馬の骨折を目の当たりにしました。
 サクラスターオー、マテリアル、ライスシャワー、無名なところでマナミオーシン、、、。
 昭和62年のダービーはメリーナイスがその強さで圧倒した年でした。
 私のモガミヤシマはどこにいったのでしょうか?

 さて、『優駿』は宮本輝の代表傑作です。
 この昭和62年のダービ馬メリーナイスが『優駿』の映画化によって
 そのモデルとなっています。

 『優駿』を名作とするならば、私的ですがオープニングと結末にあります。

 会社経営に息詰まった主人公というか、映画では仲代達也が演じたのですが
 不渡り、倒産という直面した現実、月曜日は手形の決算日なのでしょうね。
 会社の最後の金200万でしたか?300万だっらかな?どうでもいいや
 これを単勝一点買いで勝負する。

 普通だったらこんな展開は小説として、オミット。
 そんな目論見の甘いオヤジは府中、船橋法典あたりには吐いて捨てるほどいます。
 ただ、金額が違う、意気込みが違う。ここが肝心。
 そして、的中して、この会社は立ち直り、「優駿」というドラマが始まります。
 作家も凄いが、このシチュエーションを認めた編集も偉い。
 ここに、リアリティーがあることを知る読者が偉い。いや、つらい。

 そして、クライマックス。
 見事、ゴールを一着で駆け抜ける。
 不覚にも私は、そのラストの感動を最後まで疑ってかかっていた。
 その直前に失踪か、落馬か、事故骨折かと、、、。
 それが、二十代の馬太郎のアマちゃんなところです。
 現実は小説より奇なり。小説、現実を凌駕した
 作品『優駿
 それを生み出した宮本輝。凄味のある作家です。

 「勝つ」こと、栄光に、胸を張れ、目を逸らすな。
 たったこれだけのことを教えられる一冊です。

 明日、府中競馬場で高らかにファンファーレは鳴り響く。
 選ばれしもの、汝の名は「サラブレッド」
 言葉のレッテルに左右されることなく、その好走と勝利に、
 賞賛と敬意と乾杯しようでないですか。