あかんたれブルース

継続はチカラかな

みゆき嬢の「愛の射程範囲」帯に短し襷に長し

 「心はなれて はじめて気づく あんたの わがままが ほしい」
 困ったみゆきの我が儘です。
 ただ、ヨッシーさんがいうように「はなから いいなり」になる姿勢では
 彼との恋愛は成立しなかったとは思いませんか。
 この男はそんなタイプの異性は選びません。そこがみゆきの心を射止めた由縁でもあるでしょう。
 また、そんな猫ッカブリができるほどみゆきは老獪ではなく、まだ、若い。物理的な話です。

 私は以前にみゆきを「智の叶姉妹」と位置づけましたが、(いつ?)
 この男との恋愛は当初良好だったと思います。「智」のつばぜり合い、授稽古ですね。
 ところが、男の方が疲れてきちゃった。いや、気づいたのかな?
 俺たちこんな関係を構築するために出会ったわけじゃないだろう。と音を上げました。
 だいたい、お決まりのパターンで礼子とか守ってやりたい余裕の女か家庭に戻ります。

 さて、御指摘の素直になれないみゆきの事情です。
 彼女は知的な女性で相手の心を読む才に秀でていますが、反対に自分の心を見透かされることを
 極端に「恥」と考えています。それもプライドです。
 ガードが堅いのですね。銀河英雄伝説風にいえば「鉄壁みゆき」となります。
 そして、彼女の恋愛は安息ではなく緊張であり、男女の恋の駆け引きと自己愛に彩られています。
 彼女の愛の射程距離はできの悪いテポドンのようなもので自己愛の追求は日本海沿岸まで
 永劫の愛の探求は太平洋の彼方と、決して日本本土、つまり相手の核心に的中しません。

 不器用なのです。

 不思議なことにコンサートやライブではそれほどではありませんが、
 デスクジョッキーなどでは如実に顕著に現れています。CMとかでもね。
 男のほうも馬鹿ではないので(馬鹿だったらみゆきは彼を選ばない)見抜きますよ。
 なんか違うなあ、と。
 それと、不器用についていえば、みゆきがお弁当を作ったとして
 「今日の餃子は美味しかったよ」と誉めると、それから毎日「餃子」です。
 健気のようですが、これは極めるという彼女なりの性癖もあるかもしれません。

 そんなこんなで相手は疲弊してしまいました。(また餃子かよ~。と)
 ある意味、相手として貫目(度量)が足らなかったということです。
 恋の武芸者、剣豪みゆきの朝鍛に、彼は役不足だったのですね。
 そんな男ならば、なんの未練もないようなものを、と思うのですが、逃げれば追いたくなる
 のが人情というもので、ここにプライドというものも絡んで厄介なのでしょう。

 では、今度はそんな男じゃなくて、もっともっと許容範囲の大きな男なら大丈夫じゃないか
 と、考えるのですが、ついつい幸せ芝居の舞台裏を覗いたり気づいたりするみゆき。
 そして、それを嘆く歌姫。不器用で我が儘です。

 みゆきはこの曲の歌詞で不用意にも「おもちゃ」という言葉を選択してしまいした。
 すべてはこの「おもちゃ」という被害者意識(?)というか強迫観念(?)。それとも、、、。
 初期の作品とはいえ、「詩人中島みゆき」としては稚拙な表現だとは思いませんか?
 あと、捨てた男が選んだ女性に対しても自分との異質を唱え正当化しようという
 哀しい行為に奔ります。計画的とみるにはあまりにも生々しい表現ではないでしょうか。
 これを「やむにやまれぬ」「いうにいわれぬ」事情があった解釈してしまうのは
 本論、本筋を見失う可能性が高いので、ばさーっと斬ってしまいしょう。
 おもちゃと発音しないで「大人」と置き換えたほうが自然のような気がしますが、どうでしょう。
 
 結論として、最大の問題はみゆきの「ガード」なのでしょう。
 彼女の愛の封印を解く剣豪は現れるのか?
 相手以上にみゆきの姿勢が鍵になるようです。